こんにちは、鹿児島市の声楽・ピアノ教室「かごしま音楽教室」の郷田です!
歌に必要な腹筋とは?
みなさん、腹筋は歌に必要だと思っていますか?

腹筋にはいろんな種類があります。腹直筋、外腹斜筋群、内腹斜筋、腹横筋…いろいろあります。これらが歌に必要なのか?という議論は、意見が分かれるものですけど…少なくとも僕が1番発声を強力にサポートしてくれると思っている腹筋の筋肉は、別にあります。それは、
大腰筋、という筋肉、そしてそれらの拮抗筋、つまりは協力し合っている(大腰筋と逆の動きをする)筋肉群となるハムストリグスですね。


なぜ大腰筋、ハムストリングスが重要?
なぜこれらの筋肉群が発声で大事なのか、を説明すると、
まず、歌唱時の呼吸筋の中で根本的に最も大事なものを上げろと言われたら、どの筋肉だと思いますか?
これは例外なく、「横隔膜」です。
ただ、横隔膜は、以前に不随意筋、随意筋の話、つまり自力で動かせるのかうごかせないのか、の話をしましたが、
随意筋だけど、自発的に動かす難易度が高い部類の筋肉なんですね。つまりなかなか自在には使いこなせない筋肉。
呼吸の力を全く伴わないで、横隔膜だけをウーっと力入れて、自発的に動かしている実感を持てる人って…いるでしょうか?山奥の仙人とかだったら…分かりませんが笑。
どんなにすごい歌手でも、そんな話は聞いたことないんですよね。
じゃあ横隔膜に直接アプローチするのはかなり難しそうだとなると、ほかにアプローチできるところはないのか。
身体の中、つまり深いところにある、「体幹深部筋群」というのも、一応は…扱う難易度が高いものなんですが、
横隔膜と比べたら、もう少しだけ自発的に動かせる可能性があるものがあるんですね。そしてその中で発声に特に関わってくる筋肉が、大腰筋です。
横隔膜と大腰筋の関係
で、まず、大腰筋の反応が良いということはどういうことかというと。
大腰筋というのは、大腿骨の大転子という、ここについています。

で、逆の付着部、起始は…胸椎下部や腰椎のあたりについています。

この腰椎のあたり、横隔膜の付着部でもあるんですよね。これはずっとお伝えしていることなんですが、付着部が重なっていて隣り合う筋肉というのは非常に影響し合うんですね。つまり、
大腰筋の筋反応が高ければ、横隔膜の筋反応も影響を受けて高くなります。
ということで、この大腰筋、そして大腰筋の拮抗筋であるハムストリグス、を反応させて姿勢をつくる、というエクササイズをご紹介します。
エクササイズ1.

セラバンド、という、ゴム素材のバンドを使用します。Amazonとかで探すと安いものは1000円以内で購入できると思います。
色によって強度がいろいろあるので、自分の身体の強さに合ったものを選ぶと良いと思います。僕は、黒、1番強度が強いバンドを使っています。
このように、両足を足一足分のスペースを開けて、足の裏でセラバンドを踏んだ状態で、蝶々結びします。拳一つか二つ入るくらいの緩さで結ぶといいと思います。
で、立ったら、手で壁やバーを使って支えながら、
このように、足の地面を蹴るところですね。専門的には、中足骨骨頭あたりでバンドを後ろに引っ張る。

というエクササイズです。
この時に、どこの筋肉を収縮させていて、どこの筋肉を伸長しているかというと、
大腿二頭筋を中心とした、ハムストリグを収縮しています。ハムストリグスというのは、大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋、という3つの筋肉から成り立っているんですけど、



いずれも起始が坐骨、そして停止がいわゆる膝裏の下のあたり、大腿二頭筋は外側に、半膜様筋半腱様筋は内側についているんですね。


実はハムストリグというのは2つの働きがあって、こういう方向で筋肉が収縮して、股関節が伸展する、それから膝を曲げる、という働きなんですけど、
膝の曲げ伸ばし運動はあまり使わずに運動させると、筋肉の停止側よりも起始側の方に刺激をいれる事ができます。
で、このエクササイズをやる時に大事なのは、筋肉自体を意識する事です。深層筋群のいうのは、非常に集中力を持って、その筋肉自体をどれだけ意識できるかによって、刺激の質が変わってきます、
ハムストリグスの筋肉の付着部、大腰筋の筋肉の付着部と運動方向しっかり想像して、ゆっくり、地味に取り組む事をお勧めします。
意識があまり伴わなかったり、スピード感のある動きをすると、
インナーはあまり反応してくれない、と解釈してください。
そして次のエクササイズ。前の方にバンドを伸ばす運動。これは、大腰筋を使う運動です。
エクササイズ2.

大腰筋は、起始が胸椎下部から腰椎にかけてついています。停止は、大腿骨の大転子。こういう方向で筋肉が収縮します。
この時、ハムストリグスは伸長されますよね。
この二つの筋肉群を両方強化することによって、
立ち姿勢での筋反応が活性化します。そして、胸椎下部から腰椎にかけての、非常に動きやすい部分がしっかりと固定される。

それによって、横隔膜運動を安定させる、という効果を生み出します。
なので、前回喉周りのことをいいましたが、それだけだと体全体を駆使すると考えるとまだまだ不十分なので、
この大腰筋とハムストリグス、是非活性化するようにエクササイズを取り入れることをお勧めします。

GOUDA AKITOMO(音楽家、作業療法士)
武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。
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