横隔膜が下がらない人は〇〇を理解する!「呼吸筋その3」(声楽・合唱発声)

 声楽、合唱発声の研究室へようこそ!このブログは、発声に関するすごく細かい情報を発信していくブログです。

 前回、前々回と呼吸についていろいろと解説しましたが、それでも色々取り組んでみたけど横隔膜の下げ方が未だわからない!という方、多いと思います。前から言い続けています、横隔膜と肋間筋の動きについて「傘の動き」によりフォーカスしていいき、より理解を深めていきましょう。

今回の話

♪呼吸運動は、傘を開く閉じるのようなもの

傘と横隔膜➕肋骨

 早速この「傘」ですね。

 傘の運動を参考にしていただくと、悩んでたことがなんだったんだろうっていうぐらいしっくりきて、うまく下げることに成功する可能性があります。

まずは、呼吸運動の際に体の動きを示した動画を見ていただきたいと思います。 

前にもお話しましたけど、腹式呼吸という言葉もありますが、

実際は、空気は必ず肺に入って、肺が拡張、収縮を繰り返しています。

 肺自身は筋肉ではないので、自分で動くことができないのは、前回前々回にお伝えしました。

 呼吸運動とは、肋骨を動かすことによって、肺の拡張と収縮を繰り返している運動です。

 で、結果、この肋骨が非常に活動性を持って動くということ、これをまず抑えておかなければいけません。

 横隔膜の下げ方がわからない原因の1つとして、腹式呼吸をしなければいけないので、胸は動いてはいけない!という固定概念。これを持っているからうまくいかないというのが1つあるかもしれません。レナータテバルディはじめですね、これらの歌手の映像を見ると、やっぱりこう、肋骨が非常に活発に動いてるんですよね。

 横隔膜はですね、肋骨下を中心に付着してます。肋骨が挙上して、 広がりながら横隔膜が下がる。この運動というのは、傘を開く時と同じような運動なんです。

 まずこの骨部分。ここに当たるところが肋骨になります。ただ、傘と人間の体が違うところを言うとするならば、傘は、この中のところ、ろくろという棒が上に上げることによって、広げられるのですが、人間の体というのは、ろくろと中棒がないという違いはあります。

 しかし傘でいうところの、この表面のところ。この表面のところが筋肉になっていて、これ自体が、傘の骨を持ち上げるようにして、人間は肋骨を動かしてます。 

 もう一つ違う点は、傘骨と肋骨の、骨が伸びている方向です。しかし、「空間の広がり方」としては同じです。

 そういった違いはありますけれども、基本的に運動自体は、肋骨と、傘の骨の運動は、同じと考えて良いと思います。

 このように、骨が上に挙上することによって、外側を中心に横に広がっていって、 中の体積が大きくなるという仕組みになってるんです。人間の体の場合は、この外肋間筋というのが、下にある肋骨を上方向に引っ張っていくことによって、傘を開くのと同様に拡張していってます。

 そして、 吐くときは、逆の運動になります。内肋間筋という内側にある肋間筋。これは上の肋骨を1つ、1つ下に下げることによって、肋骨全体を、閉じていってるわけです。なので、横隔膜を下げるということは、同時に、肋骨を拡張させること、横隔膜を上げていくっていうことは、肋骨を閉じていくこと、

 この2つの動きっていうのは、同時に行われていて、どちらかが不十分だとどちらかに抑制がかかるようになってます。この2つはセットで、運動しなければいけないものなんです。

 なので、横隔膜が腱中心に下がって、外側の方に広がっていきますが、(傘の下に膜が張ってないですけど)張っていると想像すると…側面は広がっていくことは想像できると思います。

肋骨は上の方に拡張していく。逆に、横隔膜は下に下がっていく、相反する動きをしてるわけですよね。

 横隔膜の動きだけを考えると、横隔膜っていうのはなかなか下がりづらくなります。なぜなら、そうすると肋骨の動きを抑制してしまうからです。

 つまり皆さんが横隔膜だけを考えて、下げよう下げようと思っているとしたら、なかなかうまくいきません。この肋間筋、肋骨、 これを上に引き上げていくっていう運動を考えていないために、横隔膜を下げるってことが体得できない、そういうところに原因があるのかもしれません。

 呼吸の際に23個の筋肉が色々と動いてると解説しましたが、本当は、その他に補助する筋肉が動いてたりもします。もちろん中心となってるのは、23個の筋肉です。22個の肋間筋と、最後にプラス1で、横隔膜が運動することによって、呼吸というのは、なされてます。ので、この肋間筋は使えれば使えるほど、呼吸というのは、非常に自由になってきます。ぜひそこも、抑えといてください。

 では、具体的なエクササイズにこれから入っていきます。

 皆さん、呼吸の練習って、行っていますか?呼吸の練習に関しては、意味がある、ない、様々な意見があります。私はそんなに悪いことじゃないと思いますし、無意味な練習とは思ってない方です。

 ただ…息を長く吐いたりとか、長く吸ったりっていうのは、 呼吸筋を強化するっていう意味ではちょっと不十分ではあります。呼吸筋をストレッチングするという効果は少しあるのかもしれないですが。

 呼吸筋を強化するためには、やっぱり自分の意識で、筋肉を動かしてあげるっていうことが必要になってきます。 

 なので、長く出し入れをすると、呼吸の長さというのは体得できますけど、長い呼吸ができることと、 深い呼吸ができることはまた別物なんですよね。長い呼吸を習得するというよりも、深い呼吸を我々は習得しなければなりません。

 そうでないと歌に直接生かされる呼吸っていうのはなかなか直結していかないですよね。

 歌に使える呼吸というのを育て上げることっていうのは、なかなか難しいですが、深い呼吸をできるようにならなきゃいけないわけです。

 長い呼吸をやっても、そんなに容易く深さっていうものは育っていかないんですね。

 なので呼吸の練習をするときは少し意識をして取り組んでいただく必要があります。

 呼吸練習の時には、長さではなく、深さ!を意識することと、この傘の運動のような運動方向を考えることです。

 という事で、横隔膜が下がらないという人は、この実際の運動を詳細に知るという事で、良い運動想像ができるように頑張りましょう。

 肋骨をうまく動かして横隔膜を下げる。という事を習得できることを願います!

GOUDA AKITOMO(声楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。彰栄リハビリテーション専門学校卒業、作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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