こんにちは、鹿児島市のピアノ・声楽教室「かごしま(鹿児島)音楽教室Sing!」の郷田です!
今回はタイトルにありますように「人はいかにして、プロの発声へ変わっていくのか」という記事です。
プロの発声って…どうやったらそうなれるの?と思う方いますか?
どんな人でも最初は素人です。でも、そこから声を変えられる人、あまり変えられなかった人、いると思います。
例えば、そもそもの才能?努力がものすごかったから?それともいわゆる「先生ガチャ」に当たらないと無理なの?
いろいろ疑問はあると思います。最初に言っておくと、僕は「全員に発声を発展していける可能性がある」と断言します。
今回は、先生に習う事と、YouTubeなどの情報を見る事、そして本人の学び方、を中心にして、脳科学や心理学からヒントを拾いつつ、「歌の上達の根源的な力」はどこにあるのか、について書いていきたいと思います。
まずは、質問のアンサーから
今回の記事を書く動機、キッカケとなった質問がありますので、皆さんもこの質問に対する意見を考えてみることをお勧めします。
Q “先日自分の歌の先生に郷田先生の発声記事の事を話したら「私の教える以外の事に手を出さないように」と怒られました。先生に師事しているけど、他の情報を参考にするのはやはり良くないでしょうか?”
という質問です。
私なりのアンサーはこうです。
まず質問者さんへのアンサーとして。
このケースは、先生の意図がわからないので一例の話になる事前提の上ですが…。例えば、質問者さんが「いろんな情報に手を出しすぎていて迷っている」ような状況であれば、先生が情報を絞った方がいいという意味で、「先生以外の情報は今入れないで」という意見は真っ当だなと思います。
では一方で、質問者さんのケースに対してどうこうは関係なくて、【一般論的】にお答えしますと、「私の教えることだけやりなさい」という考えの先生は…
僕は反対で、その考えは、生徒の可能性を狭める
と僕は思っています。
ちょっと、遠回りな話です
みなさん、アフリカ諸国の飢餓がある地域というのはありますよね。

飢餓で苦しんでいる人たちが、1億くらいいると言われています。ほぼ日本の人口くらいの人が実際に今も飢餓で苦しんでいる。あまりリアルな写真は出せないなと思ったのでこのイラストですけど、みなさんも、もっと痩せ細った子たちのリアルな写真を見たことはあると思います。
これらの方々に「いま何が欲しいですか?」と聞いたらなんと答えると思いますか?
水をくれ、食べ物をくれ、ですよね。
じゃあ、飢餓に苦しんでいる地域の方に対して、我々日本人の多くに、なにが欲しい?と聴くと、あなたはなにが欲しいですか?

即答できない人、多かったのではないでしょうか?何かみなさんありましたか?
人によっては、エルメスのバッグが欲しいとか、ps5とかSwitchが欲しいとか、あるかもしれませんが、

アフリカ諸国の方々の「今すぐ水が欲しい」というのと、欲しいの次元はおそらく全然違いますよね。
エルメスのバックとかps5スイッチとか、「お店から盗んででも欲しい!」という人は…常識的な人ならそんなことしないですよね。でも、アフリカ諸国の人…に限らずです。我々も例えばいま大地震がきて、避難所にもまだ辿り着けない、そして食べ物がない水がない状況で、スーパーにたどり着いた、お金持っていません、地震で荒れたスーパーで物資が散乱している。そういう状況なら水は持っていきますよね。
つまり、欲しいには”欲求レベルの高い低い”がありますよね。
欲求と脳科学
脳科学的には、
脳っていうのは、浅い層つまりは大脳皮質レベルでは理性的な事、言い換えると意識的な活動を中心にやっています。

思考するとかイメージするとか言語的なことの指令をやっているんですね。
そして…深いコアなところにいくと、本能的な事、そして無意識的な事をやっているんですね。

例えば、イッチバン深いところには延髄という構造体があって、心臓を動かすとか、無意識時の呼吸とか、生命維持に不可欠な事をやっています。自分の意思でコントロールをできない事をやっているわけです。

そこから少し外に行くと大脳辺縁系という場所があって、ここは本能的活動、例えば情動ですね。言葉にできない快、不快から始まって、不安、嬉しいとか情動的な活動、記憶をしたり、自律神経の調整などをしています。

で、外側の方にいくと、レベルが高い活動をしています。高次脳機能というんですけど、特にこの前頭前野というところでは、難しい思考などを行っています。

以上を踏まえて、
たとえば、エルメスのバックが買いたいという心理。自分がバッグそのものを見て本能的に欲しい!と思う事よりも、例えば、他の人よりもいいバック持ってる=マウントが取れて人よりも優位に感じられるだろう。
偏見かもしれませんが笑
僕はブランド物のバッグを欲しがる人は、人よりも良いもの私は持ってます的にマウントを取りたい人、と勝手に思ってます笑。その、人よりも優位になれるな、マウント取れるな、という計算をして買ってるとした場合はです。
だから、生命維持のために本能的に「水が欲しい」という欲求と、エルメス欲しい、は、脳が「欲しい」と本気で思っているレベルが違うのわかりますか?前者はコアなところで欲しいんです、後者は浅いところで欲しいんです。
私たちの欲求が低いのは”満たされている”から。
またちょっと違う視点から考えると、我々、ある程度裕福な日本人の話です。
お腹減ってる時って、ご飯食べたいと思うじゃないですか。でもしっかり食べてお腹いっぱいになればどこかで「もういい」つまりは「ご飯欲しくない」ってなりますよね。私たち日本人が、何を欲しい?っていわれて…わからない人が多いのはそのためです。わかりますか?要は、常に満たされてるからです。

我々の生活をよく考えてみると、
寒い日は暖房がワンタッチでついて、暑い日はクーラーがつきます。家に帰ってテレビつければ面白い番組やってます。Wi-Fi繋げば、スマホで面白い動画見放題です。なんでも、揃ってますよね。満足感の閾値が低い、すぐに満足できる恵まれた環境ですよね。それは、裏を返せば社会的家畜なわけです。もちろん事情がある家庭もあるかもそれませんが、多くの家庭は、モノを獲ってでも生きていかなければならないわけではなくて、いろんなものもそうでして娯楽もそうですが、簡単に出てきますし容易に手に入ります。で、それを社会的家畜状態といいます。

家畜という事で他の動物に例えますと、
みなさん、
「野生のライオン」と「動物園のライオン」。どっちが怖いですか?野生ですよね、怖いのは。

野生のライオンは、獲物を毎日のように獲って食べ続けなければいけないから、本気で獲物を欲しいと思っていますよね。欲してますよね。そういうライオンに比べて、
動物園のライオンはすごく落ち着いています、それは、飼育員が餌を与えているから、野生と比べると「欲しい」という本能を喪失している。だから怖くないですよね。
じゃあ怖くないのは動物園のライオン。でも
どっちが「健全なライオンですか?」と問われたらどうでしょう?
人もそうです。みんな、とくに現代、更に恵まれている大方の日本人は「社会的な家畜状態にある」。と言った意味がわかりますか?我々は山に行って狩りをしなければその日、お肉食べれないわけではない。スーパーで、お金で、肉が買えるんです。もっと言うと、焼肉屋でお金払えば、たらふく食べられますよね。
家畜も何もしなくてもエサを与えてもらえますよね。
食べものを得るために命かける必要がないのは、家畜も人も同じ。更に人間は、ベッドにゴロゴロしてスマホをいじる娯楽も揃っている。
だから現代なにも考えずに、なんとなく流されて生きていれば、心の中が社会的家畜状態に極めてなりやすい。そしてどんどん近年、そういう環境になっていっています。

欲求から生まれるwant to、義務から生まれるhave to
さてまた別の視点から考えると、
僕たちが、仕事、学校、みなさんなぜいっていますか?というと、そんなことに意味はないでしょう?「行かなければならない」から行ってるでしょ。お金が必要だから、生活のために、仕事するんでしょ?義務があるから学校いくんでしょ?という人も多いと思います。
毎日「今日も何がなんでも学校に行きたい」と思って学校に行っている人いますか?おそらく少ないですよね。
ただ…僕は学生時代を思い返すと、”好きな女の子が学校いる時”は、何がなんでも学校にいくんだ、という気合いがあったのを覚えています笑。
実は、そこが欲しいという本能的な欲求のヒントにもなるんですけどひとまず置いておきます。何か特別な理由がない限り、「義務的に」「行きたいというのではなく」「行かなければならない」と言う思考で学校や仕事に行っている。そういう人の方が多いのではないでしょうか?

僕は、youtubeで発声の理論的な話を発信していますが、上達のための核となるような大事なものは、理論を知る事ではないと思っているんですね。この、本能レベルでの「本当に欲しい」と脳が欲している状態になっているかどうかが、上達の核となると思っています。

その状態になれば、例えば泥棒って、バレるかバレないか紙一重の状況で家に入るじゃないですか。ありとあらゆる手を使って家に入る方法を必死で何通りも見つけ出して、バレそうになったらどのルートを使って逃げるとか、めちゃくちゃ考えてるわけじゃないですか。よくこんな方法で家に入ったな、という見当もつかない技がいっぱいあるわけですよね
人間って、そのくらい本能レベルで「欲しい」と思うと、
脳というのは創造的に、クリエイティブになる、と脳科学の世界では研究でわかってるんですね。
他の例えを出すと、みなさんが上司から全然やりたくないような仕事、誰でも出来るような仕事を「誰もやらないからやれ」と強制的に投げられたとしますよね。
そしたら、ありとあらゆる理由を考えてつけて、いかにしてこの仕事を自分ができないのか、する時間がないのか、を説明したりします。これは、脳が「本気でやりたくない」と本能的に思った結果、クリエイティブになって、できない理由を作ることができている例です。
なので、本能レベルで思えると、良いことであれ悪いことであれ、脳というのはこのコアな部分から派生して、思考など外側の部分も含めて、クリエイティブになるよう、人間はそういう機能を持っていると言うことなんですね。
で、以上の(だいぶ長い前置きでしたが)ことを踏まえて…やっと発声の話にやっといきますけど、長くなったので次回の記事にてまたお話しいたします。

GOUDA AKITOMO(音楽家、作業療法士)
武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。
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