歌の呼吸は23個の筋肉が関わる!その2(声楽・合唱)

 声楽、合唱発声の研究室へようこそ!このブログは、発声に関するすごく細かい情報を発信していくブログです。

 今回は、前回の歌の呼吸23個の筋肉の話の続きです。

 呼吸のコントロールをより正確にコントロールできるようになるためには、まだまだ説明が必要です。

 今回も、よりテクニックの上達に役立てて頂ければ幸いです。

※基礎知識として、起始・停止という言葉を初めてきく方は、こちらをまずチェック→起始・停止って何?

今回の話

♪呼吸運動の実際

♪各部位のランドマーク※重要!

 まず、基本情報です。人が呼吸をするときに、体の中でどういうことが起こってるのかということを、正確に理解してみましょう。 

私たちの肺というのは、筋肉ではありません。なので、肺自身が膨らんだり縮んだりするっていうことができないんですね。

 じゃあ、どうやって空気を肺に出し入れしているのか?

 小学生の頃などに理科の実験でやりましたでしょうか?これはヘーリングの模型です。

瓶の中にゴム風船が入っています。瓶の底にはゴム膜が貼られています。で、これは瓶が胸郭、ゴム膜が横隔膜に相当します。

 ゴム膜を下に引っ張ると…瓶の中の内圧が下がって風船が膨らむという実験でした。

 ちなみに、ヘーリングの模型は厳密に言うと不十分な点があって、 実際の肺の場合はこの瓶自体も拡張することになります。つまり肋骨が広がるんですね。そのことも理解しておいてください。 

 じゃあ、実際の体に置き換えてお話をしていきます。

呼吸の運動の実際

 外肋間筋横隔膜が収縮すると、胸腔の容積が増えます。増えると胸郭内圧という圧力が低下します。胸腔内圧っていうのは胸腔の内側にかかる圧力のことです。 

 容積が増えたら内側にかかる圧力は低下するんです。少し、例え話で説明しましょう。

 例えば、コンサートホールに2000人入っていたら、ぎゅうぎゅうに感じると思うんですけど…この同じ2000人でも、東京ドームになったら。2000人いてもスッカスカですよね。容積が広がれば、内側にかかる圧力は余裕ができる。なのでこれが内圧が下がるという状態です。

 で、胸腔が広がって、胸腔内圧が低下すると→身体はその圧力をカバーしようとします。それによって肺が拡張して、空気を取り込んでいきます。これが吸気の仕組みですね。

 では呼気というと、普段の無意識の呼吸時は、外肋間筋と横隔膜が収縮から弛緩、つまり力を抜いて収縮をやめるんです。

 自然と胸腔が元に戻る、つまり、体積も元に戻る。そうすると、胸腔内圧が逆に上昇して空気が出ていくという仕組みになっています。

 さてさて、ではどういう動きで体積を広げているのかということをもう少し詳細に理解していきましょう。

吸気時の細かい筋の働き

 まず、肋骨を挙上させることによって、拡張するという原理を理解しましょう。

 雨の日のですが、この傘を開いたり閉じたりする原理と一緒なんですね。

 第1肋間筋の起始、つまりは第1肋骨になりますが、第1肋骨よりも上に肋間筋というのはないので、ここの肋骨は固定されてます。

 そうすると、肋骨は全体的に外側に広がっていくようになるのが大体わかるでしょうか。

 運動方向としては、全体として左右両側の斜め上方向に向かいます。

 仮に真上に向かう運動方向だった場合は、

 肋骨全体は上に引っ張られるだけなんですけれど、

 全体的に横側に広がってるという構造であるからこそ、傘を広げるような運動をして、 結果、肋骨は拡張するということになります。

 理解できましたでしょうか。なんとなく、全体がこう膨らんでいくんだよっていうだけの理解だと、筋肉は理にかなった動きをなかなかしてくれないことが多いです。ので、この形や動き方っていうのは、本当に正確に、理解するようにしてみてください。

身体部位の位置を正確に確認する

 それから、また大事なことなんですけど、これは真横から見た肋骨です。

 前回、肋骨は12個の胸椎から始まって、体をホールドするようについてると言いました。さらに補足すると、これ、どういう方向に肋骨がホールドしてますか?

 斜め下に向かってホールドしてますよね。

 地面と水平の角度でホールドしていません。斜め下に向かって行ってます。 

 なので、例えば第1肋間筋、後ろと前でついている高さが違いますよね。

 水平に肋間筋が上がっていくイメージを持つと、理にかなった運動してくれないってさっき言いましたけど、

 なので肋間筋の位置、前側は目で見ながら、このぐらいの高さかな..と確認すればいいんですけれども、

 後ろ側は目で見ることができませんので、その位置を、細かいですがちょっと解説していきたいと思います。

 後ろ側の目安となるのが、胸椎です。

 第一肋間筋の後ろ側の目安です。後ろは第1胸椎から派生してます。

 なので、第1胸椎の位置を分かっておいてください。第1胸椎の位置はこの首の付け根あたりの盛り上がってるところです。盛り上がってる骨を見つけていただいて、

 触っていただいて、左右に回転する骨が頚椎の7番、 逆にその左右に回転しないで固定されているのが胸椎の1番になります。 

 胸椎と頸椎の違いっていうのは、肋骨が派生しているかしていないかです。

 左右に肋骨が派生している胸椎は、回転することができないという特徴があります。そうして固定された胸椎1番を探り当てられたら、そこから鎖骨の下あたりまで、第1肋間筋がついてます。 

 なので、結構、後ろから前にかけて斜めの下の方に降りてくるようについてます。第1肋間筋が使われるっていうことを、体の感覚の手助けにして感覚理解するっていうことがすごく大事なことです。

 ちなみにですね、胸椎の3番は肩甲骨の上部の肩甲棘というところがあるんですけど、触っていくと、肩甲骨のぽこっと出ている場所、肩甲棘を結んだ高さのに大体あります。

 前側、第3肋骨はですね、前側の第3肋骨はおおよそ、胸骨の中央の辺りにあります。

肩甲骨の下、肩甲角と言うんですけれども、ここを結ぶ線の高さにおよそあるのが胸椎7番ですね。 

 前側、もうすでに左右に分かれていて、剣状突起から指5本ぐらいですかね。下に下がったところに胸椎7番はあります。

 胸椎12番は、両手をだらんとですね、普通に下げて、肘のあたりにおよそあります。 

 大体肘の辺りを両手で結んだ線のところに胸椎の12番があります。大体その辺りまで、外肋間筋の後ろ側が来てると思ってください。 

 かなり上級者じゃないと、このランドマークの位置はしっかり入っていかないと思います。

 でも逆にこのランドマークの位置がしっかり入ってくると、よりこの呼吸のメカニズムがですね、 パチッと体に入ってきて、難しい呼吸運動がだんだん理にかなってくると思うので、この位置感覚はぜひこう敏感になっていただいて、 すごく正確にここが捉えられるようになる事をお勧めします。それからですね、剣状突起の下を見てみてください。

 肋間筋がないんですね。なので、第6肋間筋以降のこのゾーンの前側っていうのは、肋間筋が存在してませんので、 この辺からは、側面、背面中心に肋間筋が動くということもわかっておいてください。

 さて、では、横隔膜の方を細かく見ていきたいと思いますね。

横隔膜位置レベル

 この画像では、横隔膜が腰椎の1から3番までついています。人によって、これは個別性が非常にありますので、によっては、腰椎の4番あたりに伸びている方もいるかもしれませんが、まあおおよそ、腰椎3番、4番あたりに、起始があります。

 腰椎の4番の位置は、骨盤の上の方、腸骨陵と言われるところがありまして、親指で骨盤の上側をどの辺から骨盤がついているのか…確認してみてください。

 で、その骨盤の左右の1番上の高さのところ、結んだ辺りのラインに、腰椎の4番があります。なので、横隔膜の1番下の部分、起始の部分は大体この辺まであると考えたら、横隔膜が下がってくる時に、なんか筋肉の反応があるな…場所を後ろの方はその辺で感じるはずです。それも感覚の頼りにしていただきたいと思います。 

 なので、横隔膜がうまく下げられたら、何らかの感覚がこの辺に残るということですね。 

 それを自分の体の感覚のヒントにしていただければと思います。

 という感じで、前回の記事から、さらにより詳しく、呼吸のことについて解説をしてみました。 

 特に、このランドマークといいますが、胸椎や腰椎の位置、肋骨の形がどういう形なのかということと、横隔膜、外肋間筋がどういうふうについているのか、場所の位置、感覚を正しく把握している力っというのが、呼吸の精度をものすごく高いところまで上げてくれます。

 なので、今日のランドマークの位置ですね、ぜひ覚えていただいて、長い年月をかけて覚えましょう。

 ちなみに武井壮さんも言ってましたが、競技能力向上に何が必要かって言ったら、

 自分の体を知るということがまず大事なんですよね。どれだけ自分の体に敏感になれるのか、どれだけ自分の体の位置感覚っていうのが鋭いかっていうのが、最終的にその競技能力を上げてくれるということを仰っていました。

 最終的に行きつくところはそこなので、自分の体をよく知った上で、呼吸の精度をどんどん上げていってみてください。

 では次回は、さらに詳しく。横隔膜の下げ方、についてお話をしていこうと思います。

次回→横隔膜が下がらない、という人へ

 

GOUDA AKITOMO(声楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。彰栄リハビリテーション専門学校卒業、作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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