歌の呼吸は23個の筋肉が関わっている!その1(声楽・合唱)

声楽、合唱発声の研究室へようこそ!このブログは、発声に関するすごく細かい情報を発信していくブログです。

今回から数回にわたって、呼吸筋についての解説をしていきたいと思います。

今回の話

♪歌の呼吸は腹式呼吸、と単純に解釈しないこと

♪23個の筋肉、起始・停止

♪長い呼吸ではなく、深い呼吸が大事

呼吸筋23個の筋肉

 みなさん、息を吸うときは、何個の筋肉が活躍しているでしょうか?

 答えは、息を吸うときの筋肉っていうのは23個の筋肉が活躍しています。…そんなに!?と思った方は、一つずつ読み進めていきましょう。

 書籍でもネットでも、横隔膜について言及している解説は多いです。でも、残りの22個のことをしっかり言及しているモノは少なく、これら22個を考えないというのは、すごく可能性を狭くしています。

 呼吸の実践って難しいですよね。色々頑張って試行錯誤やってるのに、声が全く変わらないって人は、この記事の最後までぜひ見ていただいて、その上で実践してみると、何か変わるかもしれません。

起始・停止という言葉がわからない方は、この先わからないことが多いと思います→こちらを読んでから戻ってきてください。

一流歌手の呼吸

まずは、こちらの映像を見てください。 

 この方、レナータテバルディという歌手です。1950年から60年にかけて、活躍したソプラノで、この当時のソプラノといえば、マリア、カラスか、レナータテバルディかっていうぐらいの大歌手です。

 胸部がすごく動いているのがわかったと思います。胸式呼吸がダメだ、と思っている方は目から鱗だと思います。その上で順を追って解説していきたいと思います。

本当のよい呼吸とは

 背骨は、24個の椎骨という骨が上にどんどん乗っかってるような感じで、S字カーブをしながらついていて、 上7個を頸椎、 真ん中12個を胸椎、下の5個を腰椎と言います。

 その下に、仙骨、尾骨という骨もありますがこちらは今回は割愛します。

 椎骨は、24個の骨でできてます。24個の骨を上に積んでいくことによってできてますね。 

 で、呼吸ですごく大事な「肋骨」なんですけど、この真ん中の、胸椎の1番、胸椎の2番、3番、4番、5番…ずっとあって12番まであるんですけど、その1個1個の椎骨が、横に向かって体全体をホールドするようについてますよね。ちなみに、椎骨と肋骨の間のとこですね、肋椎関節と言います。肋骨は、右に12、左に12、合計24個あります。

 肋骨と肋骨の間にあるのが、肋間筋です。例えば第1肋骨と第2肋骨の間を「第1肋間」とよびます。その下が、第2肋間、第3肋間…

 この肋間全部に筋肉が付着していて、これが合計22個、筋肉がある事になります。体の前の方にもありますし、横にも、後ろの方にも存在しています。囲むようについてる筋肉です。つまりすごくね、立体的な構造になっている筋肉です。

 呼吸の際、横隔膜は大事なんですけど、 この肋間筋の動きも呼吸する時にしっかり意識する必要があります。できれば、22個の一つ一つを全て意識できるのが理想です。

 よく、胸式呼吸、腹式呼吸、分けて考える人が多いのですが、体の機能っていうのはなるべく作用をするところ、横隔膜も肋骨筋も総動員して機能させた方が絶対にいいんですよね。使えるとこは全部使っていくのが大事です。

 腹式呼吸が大事です、と言ってる人は、下腹は柔らかく運動するとは思うんですけど、胸から大体硬くなる事が多いです。使えてない人が多いんですよね。 

 確かにこの下を柔らかく動かすことができるかもしれないんですけど、それだと、発声の可能性としては非常に狭くなりますんでね、

 呼吸運動はなるべく大きく体を使うってことが大事なことです。

横隔膜の起始・停止

 ではここで、恒例の起始・停止、それから作用の話になります。

 まず、横隔膜です。

 起始部は、これだけの大きな起始です。ドームの周りのところ全部が起始です!

 細かく見ていくと、 まず剣状突起という胸骨を下たどっていくと、ちょっと硬いものがあってから、最後に何も骨がないところに入ってくると思うんですけど、この胸骨の最後の部分が剣状突起。

 最前部はこの剣状突起についていて、あとは第7肋骨から後ろの方。第7〜12肋骨の内側の方にくっついます。

あとすごく大事なところは、腰椎です。第1から第4の腰椎にかけてもついているのがわかりますね。

 停止は、この腱中心部分です。

 ここが停止になっていて、停止から起始へ外側に向かって、筋肉が動いていきます。

肋間筋の起始・停止

 続いて、肋間筋です。肋骨筋は、外肋間筋と内肋間筋があって、

 外肋間筋っていうのは、息を吸うときに使われる筋肉です。それから、内肋間筋は逆に、息を吐く時に使われる筋肉です。

 第1肋間筋が第1肋骨が起始で第2肋骨が停止 。大事なポイントとしては、前だけじゃなくて、横、後ろに渡って、すごい広範囲でついている事です。

 それから、第2肋間筋が、第2肋骨起始の第3肋骨停止…第3、第4、第5、第6…肋間筋が、常に、上の方が起始で、下の方が停止、そういう感じでそれぞれついてます。 

 なので、肋間筋で大事なのが、全体的にぶわーってついてる筋肉じゃなくて、肋骨と肋骨の間に1個、肋骨と肋骨の間に1個、っていう感じで、合計22個あるんです。

 おっきな筋肉が、右左2つあるっていう認識ではなく、22個独立した筋肉がある、と理解してください。

 横隔膜も、肋間筋も、肋骨の下は、後ろ下りになってます。

で、肋間筋に関しては、第9肋間筋と、第10肋間筋は、前の方には存在してなくて、後ろ側だけついています。ここも結構大事なポイントですので、覚えておいてください。で、横隔膜と肋間筋が、息をする時には同時に、こういうような運動をしてます。 

 停止から起始に向かってこういう方向で、1つ1つ、作用してますので、結果的に、この、肋骨を1つ1つ上に持ち上げるような感じで、(傘が広がるような動きをして)働いています。

 ここでものすごく重要な話をします。呼吸というのは、浅い呼吸と深い呼吸っていうのがあるんです。呼吸で圧倒的に大事なのが、呼吸の深さなんですよ。 

 ヘーリング模型でよく説明されますけど、息って外からの息を中に向かって入れ込んでいくような感じで…入っていくわけじゃないんです。必ず、肺周りの横隔膜とか肋間筋を使って、体積をを広げることによって、胸腔内圧が陰圧になって、肺の中が外の空気を引き込んでくるような感じで、息って入ってくるんです。

 なので、息が入ってくる順番っていうのがあるんですね。その順番っていうのは、身体の拡張があって→空気が入ってくるという順番です。

 自分から吸いに行った結果、胸が動くっていうのは、浅い呼吸なんです。

 もしかしたらこのことを一般的に胸式呼吸っていう言い方をするのかもしれないですけれども、この方法っていうのは全く使える呼吸じゃありません。ですので必ず、息を吸う前の段階で、体の拡張があってから(筋肉が動いてから)→入ってくるっていう順番を守る事です。自然と勝手に取り込まれるっていう感覚で息を吸うっていう事が最終的には非常に大事だってことを知っておいてください。

 次回は、呼吸の話をもう少し詳しく解説していきます。→その2

GOUDA AKITOMO(声楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。彰栄リハビリテーション専門学校卒業、作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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