「外喉頭筋群」を詳細に解説!鍛える前に知っておべきこと(声楽・合唱)

 こんにちは、〈声楽・ピアノ教室〉鹿児島音楽教室Singのブログ「声楽、合唱発声の研究室」へようこそ。このブログは、発声に関するすごく細かい情報を発信していくブログです!

 今回は、「声の響きを作る」役割を担う外喉頭筋群の話です。

今回の話

♪「外喉頭筋群」の起始・停止

♪「外喉頭筋群」はそれぞれどんな役割をしているの?

♪「喉を下げる」の注意点

 喉を下げる筋肉を鍛えましょうという言葉をよく聞きますでしょうか。 

 でも、ただ喉を下げるということを安易にやってしまってる人がいるとしたら、これは大警告です!

 どうしてかと言ったら、口頭というのは上下の2方向で運動してるわけではないんです。厳密にはこの筋肉の図を見ていただければわかると思うんですけど、

 この4方向に動きがあります。奥斜め上、前斜め上、奥斜め後ろ下の方向です。この理解がなく、ただ下に下げるという風に考えて運動すると、声が枯れる状態は常習化する、そういう結果が待ってるかもしれません、

 喉頭が上がるっていうことはもちろん良くないですけど、強制的に喉を下げようとすることは同じくあまりやらない方がいいと私は思います。

 ではまずは、外喉頭筋群の起始・停止、それから運動方向をざっと見ていきたいと思います。

※基礎知識「起始・停止」をまだ読んでいない方→こちらを読んでから戻ることをお勧めします。

舌骨上筋群の起始停止、運動方向

 まず、茎突舌骨筋。起始が耳の下あたりにある茎状突起というのがありまして、突起物があります。 

 そこから、舌骨にかけてついてます。なので、茎突舌骨筋という名前になってます。停止から起始に筋肉が動くので、 この方向、舌骨や喉頭を後ろ上の方に引き上げます。

 それからオトガイ舌骨筋。

 起始がオトガイ、オトガイというほは顎の先端のところの名称です。そして停止が舌骨なので、 舌骨を上前方の方に引き上げます。 

 それから顎舌骨筋。

 こちらは、広い範囲にわたって起始がありまして、停止が舌骨、この方向に動きます。

顎ニ腹筋です。

これはちょっと珍しい筋肉で、起始・停止に由来した名前になってません。 

腹が2つあるという珍しい筋肉なんですね 停止が真ん中にあって、起始が舌骨のワナっていうですね、紐でくくったようなところになってるのが起始で、

停止が2つあります。

 この方向とこの方向、2つの動きを、1つの筋肉で行っています。

 これらの筋肉は 舌骨上筋群と言われています。

 作用は、喉頭を引き上げるっていうことなんですけど、喉頭が上がる=喉を閉める、ということが言えるんですね。で、これを見ていただきたいんですけれども、

 喉頭が上がって、それに連動して喉頭蓋が蓋をして食道の方に食べ物を送る。 

 これが、喉頭を引き上げる舌骨上筋群の役割なんですね。逆に言うと、ここが閉まっている=喉が閉まっています。喉頭蓋が下に倒れてるっていうことを喉が閉まってると解釈できます。

 なので、発声の時の舌骨上筋群はなるべく収縮させないというのが1つの鉄則です。喉を上げないというのはそういうことです。

 じゃあ次に、この舌骨の上にあったのが舌骨上筋群ですけれども。舌骨の下にある舌骨下筋群を見ていきたいと思います。

舌骨下筋群の起始停止、運動方向

 甲状舌骨筋。起始は甲状軟骨で、停止は舌骨です。

 舌骨をその下にある甲状軟骨に近づけていくという作用する筋肉です。

 次に胸骨舌骨筋、それから胸骨甲状筋ですね。

 胸骨が起始で、甲状軟骨や舌骨に停止を持っている2つの筋肉です。特に胸骨甲状筋。

 この働きで喉頭を下に下げることは、喉頭方向の4方向の中では唯一推奨できる方向とはなってます。 

 甲状軟骨が下に引っ張られることによって口頭蓋が立ちます。つまり、 口頭スペースを広げて豊かな響きを獲得することができる。また、輪状甲状筋のこの喉頭の全方向で運動をサポートすることにもなるので、声帯の張力にも安定感を持たせるという、 そういう効果も期待できます。

 ただし、冒頭でお話した話なんですけれども、 喉頭をただ下げればいいものではないという話をしました。喉頭を下げる筋肉であるんですが、この肩甲舌骨筋を使ってしまうと喉頭が奥に入っちゃうんです。

 すると、甲状軟骨が前に行こうとする運動の妨げになるということ、あとは咽頭腔が狭くなるっていうデメリットがあるんですね。 

 胸骨甲状筋の逆の話なんですけれども、この咽頭腔のスペースが狭くなると、声の響きには悪影響を及ぼします。

ちょっと想像してみましょう。首を人からガッと掴まれて、グーッとこっち側に押されて、その状態で声を出そうとしたら…やっぱり声苦しくなりますよね。これと同じなんです。ので、甲状軟骨っていうのは、 奥に入らないで、なるべく前側にあった方が絶対にいいんです。咽頭腔のスペースができる関係で。

喉頭が奥に入るっていうのはそういうことなんですね。

 で、肩甲舌骨筋が常に使われてしまう習慣ができてしまうと、ずっとそれを繰り返してるうちに、喉頭が奥の方に埋まり込んでしまって、 なかなか前に出てこなくなってしまうんですね。これが慢性化してしまう…そうなってくると、もう重症になって、 声を普通に出すこともなかなか苦しくなってきます。

 ちなみにそういう人は…結構多いんです。喉を下の方に下げようとすると、胸骨舌骨筋とか胸骨甲状筋よりも、肩甲舌骨筋の方が働きやすいっていう現実があるんですね。 

 胸骨動かせるよって人、そんなに聞かないじゃないですか。でも、肩甲骨を動かせるよっていうのはみんな動かせます。動かしやすい、肩甲骨に付着している肩甲舌骨筋の方が、喉下げる時働きやすいんですね。

 肩甲舌骨筋を使わないで胸骨甲状筋と胸骨舌骨筋だけを使うという発声は、かなり上級なテクニックです。なので少なくとも、声を出さないでひたすら喉を下げる筋肉を鍛える練習…こういったものはあんまりおすすめしません。そういうことをやったから一流の歌手になったっていう一流の歌手の話はほとんど聞いたことはないです。

 その声を出していく上で、この喉頭下、特に、喉から胸のあたりの声の支えっていうものを意識することによって、結果的に喉頭引き下げ筋、つまり胸骨甲状筋を使う。これは声の成長の促進にとってはすごく大事なことです。 

 なので、そのように理解をしてみてください。

 実は、私もこの肩甲舌骨筋を使ってしまうクセをつけてしまった事があります。長い間、このことが発声のことを悩ませてしまいました。ただただ下げようと思って努力していた時期がありました。

 でも、本当にこの肩甲舌骨筋の力を覚えてしまったら、結構厄介なんです。なかなかクセが取れません。 

 なので、喉を下げる筋肉の鍛練に、安易な方法を用いる、という罠に引っかからないでください

 今回は、外喉頭筋群の話でした。次回は、喉を下げるっていうことの他に、舌つまりベロの、ポジションなども発声にすごく関わってくるんです。喉下げるっていうことと、舌のポジションっていうのもすごく深い関係がありますので、次回はそのようなお話をしていこうと思います。

次回の話→「軟口蓋は挙げる?下げる?」

GOUDA AKITOMO(声楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。彰栄リハビリテーション専門学校卒業、作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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