喉がしまる人と喉が開く人の違い。

喉が締まる人と開く人…。

何が違うのでしょう???喉頭下制についての新しい見解にも触れながら、説明していきたいと思います!

みなさんこんにちは、声楽とピアノの教室「かごしま音楽教室Sing!」の郷田です。

歌を歌うみなさん、喉って…閉まって欲しくなくても、閉まりますよね。。

レッスンで「喉に力が入ってます、脱力ができてないから脱力しなさいー」って指摘されて、その通りにやったら「ヘロヘロー」って声になったり。で…やっぱりしっかり声を出さなければいけないと思って輪郭のハッキリした声を求めれば、やっぱり喉が閉まってしまう。この繰り返しはシンドイですよね。

これを解決するのは、簡単にいうと(あとで詳しく触れますが)喉頭低位、つまり俗にいうノドを下げてって事を達成すれば解決するんです。

ただ…とはいえ、喉ってそう簡単に下がってくれないじゃないですか?そこが難しい所だと思います。

今回は、喉がしっかり下がらない原因を検証して、下がってくれる方法にちゃんと着地していきたいと思います。そのために、「解剖学的な側面」だけを頼りに検討していくのは限界があるとおもっています。何か別の視点から考えていかないとここを突破なかなかできないと思いますので、今回は「物理学的な側面」を加えて検討していきたいと思います。

「喉が上がる=喉が開く」のはなぜ?

まず、喉を下げるとなぜ喉が開くのか、という事。

これは逆に、”喉が上がるとなぜ喉が閉まるのか”という話の方がわかりやすいので解説していきます。

物を飲み込む時というのは喉、つまり喉頭が上がって、気管と食道を分けているこの喉頭蓋が気管の方を塞いで、食道の方に道を開きます。

喉が上がると喉頭蓋が下がって空間を狭くなります。喉が閉まっている状態というのはまず、喉頭蓋が下がって気管の方の空間を閉ざしている状態に近いものです。

逆を返せば、喉が下がれば喉頭蓋がよく立って空間が開けるから喉が開く。

シーソーのような物ですね。

喉頭が上がれば喉頭蓋は逆に下がって蓋になる。喉頭が下がれば喉頭蓋は蓋をとった状態になる、ってことです。 

さて喉がしまるときに起きている事象なのですが、実はこの喉頭蓋の上げ下げだけではなくて…ここに咽頭収縮筋というのがあります。

物を飲み込む時に、この咽頭の外側から、歯磨き粉のチューブをぎゅっと握るような力が使われる。この力によって食べ物を食道に押し込んでいくんですけれど、

実は、喉を締めているなー、と感じる時の喉の圧迫感というのは、ほぼほぼこの「咽頭収縮筋」の力なんですね。

この喉頭蓋が下がって気管に蓋をします、という運動と咽頭収縮筋が使われて咽頭腔が閉まります、という2つの動きは、いわゆる反射運動で、2つが同時セットで動きます。

つまり、喉が上がる→喉頭蓋が下がる→そして咽頭収縮筋も使われて咽頭腔が潰される。これが嚥下反射であり、すなわち発声時にこの傾向が出たら喉を締めている傾向が強くなる、という理解をしてみてください。

これを頭に置いといた上で、一旦喉上げ、喉頭蓋下げ、咽頭収縮筋のの話から離れます。しかし、この話に最終的に戻ってきますので忘れないで頭の脇には置いておいてください。

声門下圧の重要性

では、一旦違う話になりますが、

声を出す時の、理想的な息の動き方とはどのような動きでしょうか?

ここに風船があります。

で、みなさん、ココ(指で握っている部分)。ここの状態ってどうなってます?

圧がありますよね?身体に置き換えるとココの圧が生じている状態の事を「声門下圧」といいます。つまり、この声門下圧をしっかり感じられる呼吸ができていれば、喉は上がる事ないのです。

声門下圧が大事だよーという、ここまでの理論の話をしている記事に出くわす事はありますけど、ここから更に検討していった記事はあんまりないというか…少なくとも僕はみたことがありませんので、ここから是非、よく聞いてください。

という事で、この声門下圧の話も忘れないで頭に置いておいてください。また、違う話となります。

腹腔、胸腔、口腔、咽頭腔

身体の中、というのは、いろんな空間があるんですが、4つに分けてみます。

腹腔、胸腔、口腔、咽頭腔。咽頭腔は更に上咽頭腔、中咽頭腔、下咽頭腔、と3種類あるんですが、いまは、まとめて咽頭腔、だけ考えましょう。

さて、このいろんな腔…つまりは「空洞」があるとですね、内圧、というものが存在してるんですね。

水の中に容器があれば、必ず中から外への水圧と外から中への水圧がある、のと同じように、

身体に空洞という容器があれば、外の気圧と中の気圧というものが存在しています。

で、結果的に空間に外方向で力が加わっているものを「陽圧」といいまして、

逆に内方向で力が加わっているものを「陰圧」といいます。

例えば、ポテトチップスを山の上の高度が高いところに持っていくとパンパンになりますよね、これを陽圧状態。で、地上に降りると元に戻る。または陰圧になったらペシャンコになったりもします。

じゃあ、この4つの腔について話していきたいんですけど、

腹圧(サラッと)

まず腹圧というのは、今回の話ではあまり主になりませんのでサラッといきますが、このお腹の空洞の中に空気は存在していません。何があるのかといったら、胃、腸、肝臓、腎臓とかの中に内容物や、飲んだお水とか、そしてそれとは別に腹水という水があったりします。

で、主に水分が多いので、水圧がかかっています。増えすぎると病気と言われる腹水ですね。外の気圧に対して水圧の方が強いので、常に腹腔というのは陽圧になっています。

腹腔、腹圧の話は、横隔膜の運動環境という点で発声にすごく大事な要素ではあるのですが、

今回の喉を下げる話との関連性は他の腔よりか高くないですので、ここまでにしておきます。

逆になぜ他の腔の方が関連性が高いのかというと、腹圧は、「水圧」であって他の腔は、「空気」による圧であるということと、

腹腔に対して、胸腔より上の腔3つは、全て開通している、という理由でこれらの方が関連性が高い、と思ってください。

じゃあこの空気で開通している、胸腔、口腔、咽頭腔なんですが、

胸腔、口腔、咽頭腔

胸腔は、声を出している時、肺自体は空気が減っていっていますので「陰圧」になっています。

が、ここの出口。声門下は陽圧になっています。全体的に陰圧ですけど、出口付近は陽圧になっています。 

で、この陽圧度、つまり圧力が高いという状態は、「息によって声がしっかり支えられている」状態なんですけど、

ここからが重要です。

口腔内圧、咽頭腔内圧が…

胸腔を抜けた先です。口腔内圧、咽頭腔内圧が、陽圧になっていると、声門下圧が低下する、という現象がおきる、これが、今日の動画で最大のポイントです。

もう一度いうと、口腔内圧、咽頭腔内圧が、陽圧になっていると、声門下圧が低下する、ということです。

物理学で、並進力というんですが、胸腔内圧以降の内圧が陽圧であるという事は、声門下圧と同方向の圧力が加わっています。

そうすると、この声門下圧は、低下するんですよね。

で、声門下圧が低下した状態、つまり圧が緩んでしまったら、少しずつ空気が出ていかないので長いフレーズ続けられないですよね。ので、圧が緩んでしまって息が長く続かない状態は息漏れ声という状態です。

そして、反射的に空気の漏れを違う位置で代行運動をして、圧をやっぱり作っておこうとする働きをやっておくと、一応息が続くようになります。

その代行で圧を作る動きというのが、この咽頭収縮筋の収縮で咽頭を締める、という動きになります。 

咽頭収縮筋を使うと、息を少しずつ出す事をサポートするんですが、

この声門の上の方で空気を圧縮していて声門下の圧縮が弱くなっている状態で声を出すのと、声門下だけで空気を圧縮している状態で声を出すのとでは、声帯の鳴り方が変わりそうな予測というか、想像というか。つきますでしょうか?

水圧で代用して例えると、水のホース先端を圧縮して壁に水を当てるのと、圧縮しないで壁に当てるのとでは、壁に当たる鋭さが違いますよね。

あともう一つは、ホースから出る水の表面積です。圧縮された空気は表面積が狭い。つまりは声門が狭い状態で空気が通過できますよね。対して圧縮されていないと、表面積が広いので、声門を広げておかないと空気は通過しづらくなります。

これは、つまり、前者は声門を極力閉じている状態を作れるのに対して、後者は、声門が開いている状態を強いられることになるとも言えます。

Screenshot

という事を検討していくと、

声門下圧が高い状態が大事。なぜなら、声門を通過する時に息が圧縮されている必要があるから。

でも、口腔内圧や咽頭腔内圧が陽圧になっていると、声門下圧が緩んでシステムが狂うんです。

口腔内圧、咽頭腔内圧が陽圧になっている事で、並進力が働いて声門下圧が低下してしまう。そうなった状態でも声の芯を作ろうと体が反応すると、咽頭収縮筋が働いてこのポイントで圧を作りはじめる。咽頭収縮筋が働けばセットで喉頭が上がる。そうすると声門の上で圧縮してしまう。結果、声門に当たる息の表面積が広がる。つまりは声門閉鎖不全にもなってしまう。

だから、声門より上の口腔内圧や、咽頭腔内圧が、陽圧にならない事、もっというと陰圧の方向で力が働けば、

逆に声門下圧は高まる、という事がわかりますでしょうか?

今回は、喉をしめてしまう人と、開く人の違いは、一つには発声時の口腔内圧や咽頭腔内圧が関わっているというお話でした。

また今後も発声に関する記事を参考にしていただけましたら幸いです。

GOUDA AKITOMO(音楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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