ブルグミュラー25の練習曲 12.別れ を解説

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こんにちは、声楽・ピアノ教室「かごしま(鹿児島)音楽教室」の郷田です!

今回のこの記事では、ブルグミュラー25の練習曲より12番「別れ」を解説していきたいとおもいます。

形式

前奏+楽節A+楽節B+楽節A+コーダ、の形式をとっています。

楽節Bの8小節は長調で書かれてあり、それ以外の部分は全て短調。「別れ」という曲は世の中にいっぱいありますよね。時に、「新しい旅立ち」の意味を多く含む曲もありますが、この曲は…40小節のうち32小節は短調というスタイルや、終結の印象もわかると思いますが、悲しみや辛さが全体を占めて、希望を見出せずに終わる曲、なのではないかなと思います。

前奏

allegro molto agitatoと書いてありますね。

結構速いテンポで、表想も「molto(とても)、agitato(激しく苛立って)」。切迫したようなテンポにはなると思いますが、

前奏部分は、楽節Aの”in tempo”に入る前の部分で、タップリとしたテンポ(つまりin tempoにとらわれて速くしない)を心掛けると良いように思います。

ブルグミュラー25の練習曲は、1851年の作曲です。クラシック音楽史で作曲当時の音楽スタイルは、ちょうどテンポの変動や、libero(自由さ)が広まりつつあった頃です。

「別れ」の切迫感を最初からフルスロットルで表現したい場合はおそらく前奏部分から曲が書かれる事はなく、楽節Aからこの曲がスタートされるのではないかと思われるからです。

前奏のこの右手のメロディは、いわゆる、「泣きのメロディ」のように感じませんか?

そして左手は、8分音符を4回叩きます。心臓がトクトク…と脈打つような、そんなリズムに聴こえます(私には笑)

そう考えると…左手をバンバンバンバン!とは、弾けませんよね笑。手首を使って柔らかく、静かに鼓動がするように刻んでみてください。

右手で呼吸(ため息)を表現し、左手で心臓の繊細な鼓動を表現する。悲しい時の「人の身体感覚を具現化するような」前奏なんではないかな?、という個人的な解釈の話ですが、参加になさってください。

楽節A

3連符が印象的ですよね。

過去の回想を思わせながら、切迫するような3連符です。

この楽節A、特筆すべき点は1拍目にアクセントを開いていない(2拍目のアクセント記号が多く、3泊目にも一回あります)なのかなと思います。

このアクセント…なぜ2拍目中心にあるのでしょうか??

この楽節の1番最高潮になる部分はどこでしょう?9小節目の1拍目の高いラ、の部分です。

その1拍目のインパクトをより高めているのが、常に2拍目にアクセントがある事だという事はわかりますでしょうか?

2拍目アクセントを連続させて(耳を2拍目アクセントに慣らされる→急に1拍目にフォルテ)この箇所へ導入すると、この9小節目の印象、インパクトというのは非常に強いものとなります。

それらを計算して、2拍目アクセントをブルグミュラーさんが多用している、と解釈して良いと思います。

また、アクセントといってもただ2拍目を強くすれば良いのかというとそういう訳ではありません。

例えばまず左手を見てみましょう。2拍目に跳躍して高いファから下行音程を構成しています。

弦楽器を想像してみてください。左手はチェロの動きだとします。

そうすると、

チェロで高い音というのは、指板を低い位置に動かす必要があります。この指のポジションチェンジに少しタイムロスが生じますよね。それがチェロの演奏の「アジ」にもなるところです。

おそらく、そのタイムロス…というよりも「タメ」が2拍目に生じる。それを右手のバイオリンが合わせに行く、そのような意味合いのアクセントなのではないかと推測されます。

そう考えると、このアクセントは、音量をただ大きくするような弾き方は適しません。テヌートまではいかないにしても、音を「保つ」ようにしてニュアンスを出す、という事を試みましょう。

そうすることによって、楽節Aの全体的な不安定な波、を演出することができます。そして、9小節目の1拍目のフォルテが強い意味を持つようになるのです。

10、11小節目も2拍目のアクセント(ダメ押しで4拍目も)が更に不安定さで曲の高揚感が高められています。

楽節B

前述したように、長調で書かれてあり、「悲しいけどでも…こんないい思い出もあったんだけどな…」というようなポジティブな楽節になります。

「別れ」を経験する時…私の個人的な話ですが、小学校高学年の時に転校を経験しているのですが、クラスのみんなとお別れ会を開いてみんなで泣いた…という素晴らしい体験をしました。

引っ越しで移動する電車の中で、「あの時〇〇くんがこんな事言ってくれたなぁ」と思い出す時というのは、普段「嬉しいな」と思う時以上の「嬉しさ」を感じる瞬間だったと思います。

みなさんの、辛い別れの時に垣間見える、「良かった事」を思い出す時というのは、いろんなものが詰まった「嬉しさ」があると思います。そういった気持ちを指先に乗せましょう。

楽節Bの終わり2小節は、暗い和音が現れていって、また激情的な楽節Aにリターンしていきます。

コーダ

楽節Aの最後から一転、Pになります。そして、1番最後はFで終結していますよね。

人との別れ、と例えばシチュエーションをするならば、

別れる相手が自分から遠ざかっていく。いよいよ見えなくなって、大きな嘆きがある。(そして舞台だとしたら、幕が下りる!)

そんな最後を演奏で演出してみましょう!

GOUDA AKITOMO(音楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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