こんにちは、鹿児島音楽教室Sing!の郷田です!
ピアノの教則本や練習曲、本当に世の中にたっくさんありますよね笑。どうな教材を使ってたらいいのか?どんな選曲をすると生徒さんが上達するのか?という事は、ピアノの先生は日頃からとっても考えているものですよね。そして、ピアノ学習者、とくにお子様のピアノ学習に熱心な保護者の方もとても気になるところなのではないかなと思います。
私は留学も経験して(声楽が専攻でしたが、イタリアの音楽院でピアノも履修、自分で言うのもなんですが…結構頑張っていました)、良くも悪くも日本のピアノ教育との違いも多少感じています。
という事で、ピアノ教本や練習曲の選択について(=当教室のビアノ練習曲の考え)述べていきます。
既定路線を作ることは本当にいいのか
初学者の導入教材は…お子様も大人の方も含め、導入教材としては、私が幼少の頃はどこの教室も「バイエル」でした。今は、(ネットなどでチェックをした限り)バイエルでやっている教室もだいぶ少なくなったのではないかなという印象があります。
私は「バイエル」が良くない教材だとは決して思っていません。しかし、「バイエル」に限らないのですが、
「既定路線、マニュアル」通りの進路を”全ての生徒さんに通ってもらう”
という方針には、あまり賛成ではありません。
既定路線とは、「バイエル」が終わったら次はブルグミュラーをやりながらハノンやツェルニーを同時進行で、それが終わったらソナチネ、ソナタ、そしてシューマン、ショパン…という「既定路線、マニュアル」通りに、生徒さん全員に同じルートで進めて行く路線です。さらにいうと、先生が納得したら練習曲番に花丸をつけて、全クリアするまで教則本や練習曲集が変わらない、という方針も良くないと思います。
その既定路線にハマる子であれば伸びていくかもしれませんが、ハマらずに伸び悩む子、ピアノが楽しく無くなってしまう子、などさまざな問題を生む事に大いにつながっているのではないかなと思います。
小さい子の導入教本
小さい頃の導入本に関しては、バイエル、バスティン、オルガンピアノの本、そのほかにもいろいろありますが、一つに決めている先生も多いと思います。一つに決めても子供にとっての大きな弊害などは何もないのですが…成長プロセスとは、教則本の曲をこなす、ことに全て凝縮されている訳ではありません。多角的に子供の興味関心を引き出してあげながら学びに繋げて、教則本は実践確認で使用する、という位置付けが良いのかなと個人的に思います。
そう考えると、バイエルは古典的な曲の作り(左手のドソミソが多いというと伝わりますか?)に偏っており、バスティンはアメリカ的なスタイルに傾倒していますよね。もっとも初期は子供の様子や特徴を見ながら、得意な曲調で両手奏をまず出来た(両手奏は多くの子がピアノ弾けた!と実感するものではないかと)という「成功体験」まで繋げることを私は一番大事にしています。
なので私は教則本は一つに絞らずに、メインテキストは一応用意しておきながらもコピー譜を随時差し込む、というスタイルをおおよそとっています。左手を5度和音でおさえてメロディを弾く曲で両手奏が初めて出来る子がいたり、右手と左手はそれぞれメロディ、追いかけっこをする曲で出来た実感を得る子がいたり、スタイルの好き好みや得意不得意が、すでに小さい子でも見られる事が多いからです。メインテキストのみだと、柔軟にその子のスタイルに合わせる事ができなくなってしまいます。
ではもう少し進んで、導入教材が終わった後の、定番の曲集について私見ですが書いていきます。
ブルグミュラー
ブルグミュラーを始める頃(私は唯一ブルグミュラーは既定路線に近い扱いをしていますが、25曲全部終わらせることにもこだわっていません)に入ってくると、子供達の個別性はより明確な違いが生じてきます。手の長さ、体のサイズ、感受性(特に男の子と女の子ではかなり違います)、運指の個性(ある子には弾きにくいパッセージでも、ある子には弾きやすいパッセージである場合もある)など、みんな違う個別体です。
その頃に教材や練習曲に既定路線を作ってしまう…特に、ブルグミュラーやツェルニーなどを1番から25番、30番まで一つずつクリア→全て終わるまで絶対に次に行かせないようなミッション…というのは、子供によっては非常に勿体無い時間にもなるのかなと思います。
ツェルニー
ツェルニーでいうと、30番、40番、非常に練習曲が多いですよね。そして右手の運指テクニックに偏りのある曲集とも感じます。それを終わらせないと次に行けないという仕組みよりも、ある程度4,5曲ほど体験したら、違うテクニックを扱う曲に移行した方が、幅広いテクニックを短期間でバリエーションを持ってこなす事が出来ていいのかな、と個人的に思っています。
ハノン
そしてハノン。私は、あまりやる方ではありません。特に白鍵のみの曲は。なぜなら、実践の曲で使うパッセージが少ないからです。(リズムバリエーションは身になるという意見もありますが、違う曲でも工夫して取り組めます。)
ただし、ハノンの12個の調性スケールは…めちゃくちゃ大事です!指の筋肉を鍛える練習曲、という位置付けでハノンは言われる事もありますが、私はこの調性の運指、ハノンの最も評価される点はここだと思っています。ので、ここに関しては全生徒さんに必ず取り組んでもらいます。
結論
結局何が言いたいのかというと、生徒さんに合った選択をする、ということにつきます。
例えばピアノを習う目的も一人一人違います。作曲に繋げるためにピアノを習得したい人もいれば、ピアニストになりたい人もいます。ピアニストも全員がオールラウンダーなのではなく、ロシア専門、フランス専門、ドイツ専門、などによってテクニックの得意分野や不得意分野があるものです。私のように声楽、音楽家として楽曲を分析したり曲想を理解するために伴奏を苦なく弾ける状態でありたい、という目的の人もいます。ディズニーやジブリの曲、ゲーム音楽の曲を楽しみたいというモチベーションの人もいます。大人の方でいうと、「とうしてもラ・カンパネッラを…(有名になった方もいますね、素晴らしい事ですね)」という方もいます。
それらを総合すると、一人一人求めるもの、望む将来の形、はみんな違います。そしてイタリアで学んでいるピアノの子達は、日本人の子よりも粗いところはありましたが、みんな個性的でした。そしてここが大事なのですが、楽しそうに弾く子が本当に多かったです!
そう考えたら、本人が何を目指しているのか、本人の手に身体に合う曲は?野菜嫌いだけど野菜を取らなきゃ、という目的であえて不得意なテクニックの教材をやる期間、など、目的別に練習曲や教材を選ぶのが良いかなと思います。既定路線だと、ツェルニーが終わらなければ他のものは数ヶ月、何年、経験できない型にハマってしまいます。
最後に、大事な点をあと2点。
1点目は、先生主導で決定するのはある程度の年齢まで。先生と相談するにしても、最終的に本人の意思決定によって練習曲を決めること。練習する曲の目的を本人の中でハッキリしている事。
2点目は、何の曲を使って練習するか、よりも、何を意識して、どんな運動イメージを持って、運動理論を持って、身体を扱うのか、ということを思考しながら練習に取り組むことが、本質的にはテクニック習得に大事であるという点。
それらも忘れてはならないと思います。
GOUDA AKITOMO(音楽家、作業療法士)
武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。
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