幼稚園、保育園のお子様へ、ピアノ教本からスタートしない理由

 

 こんにちは、〈声楽・ピアノ教室〉鹿児島音楽教室Sing!の郷田です!今回は当教室の「ピアノ導入=プレ・ピアノ」コースについてお話しいたします!

20数年前…私の初めての指導は苦い思い出。

 私が子供にピアノを教える事を最初に行ったのは…大学3年生の時だったと思います。母親の知り合いの方の息子さん=3歳の子、のピアノ指導を頼まれました。その時は、昔の定番の教則本、「バイエル」をメインテキスト(現在はバイエル以外のものを使用)、そのほかソルフェージュ教材も使って指導を始めたんですが…

 そもそも、お子さまに椅子に座って貰うことが叶いませんでした笑。ドの場所は楽譜ではココ、鍵盤ではココだよ、という声も虚しく響き、(というよりも耳を塞ぐというリアクションで「聞きたくない」と主張してくれていました笑)唯一、掌で鍵盤を叩くのが好きでしたが、なかなか指運動までも移行できずに、数ヶ月がすぎていきました。結局お母様が「なかなか興味を示してくれなかったですね…先生ご苦労おかけしてすみませんでした」ということで、レッスンは終了してしまいました。

 実はピアノ講師デビューは、大きな洗礼を浴びてしまったのです笑。しかし一番最初にこの経験をさせていただいた事は、ピアノ以上にお子様の成長や発達について知る事、学ぶ必要性を知ったという意味で、その子に今でもとても感謝しています。

小学生と同じような指導は、小さい子には難しい

 楽譜を見て、その通りに指を動かす。これは、文章を見てその通りに声を出す、とほぼ同じと私は捉えています。多くの子は音読ができるようになる=教育がしっかりしていれば、最終的には多くの子は楽譜を見てピアノを弾けるようになります。ただ、

 たとえば通常教育で音読は、小学1年生から教科教育として行われます。小学校と幼稚園や保育園の違う点とは…「キンコンカン」チャイムの有無ですよね。1時限=国語、2時限=算数…と枠組みがしっかり決まっていて「その時間は勉強の時間」と小学校は決まっています。そして、教科書1ページ目から進んでいく教科書を使った「教科教育」は小学生からスタートするんですね。

 本来、幼稚園や保育園は勉強をする所ではなく、遊ぶところ。学びを目的とする場合も、遊びの延長→学びがある、という考えの上で、実施されるものです。

 ピアノ教育も、まだ未就学の子達に「教科書1ページから、覚えていきますよ」という事を始めると…中には興味を持って続けられる子もいるかもしれません。しかし男の子でも女の子でもいずれにしても「よくわからない難しい事をさせられている」と拒否的になる→ピアノに座り続けられない、ピアノの下にかくれんぼするようになる、逃げる事が習慣化する、というパターンはつきものです。

 子供の「させられる、強制される事から逃げて自由でいさせてくれ」という事の表れは、非常に自然なものです。

 このことについて、レッスンを「成り立たせたい」と思う先生は困ってしまうと思いますが、生徒主体で考えれば実はなにも困る事はありません。ある程度自由にしてあげて、その子が次に楽しいと思ってくれる取り組みを探していけば良いと思います。

 保育園や幼稚園、家庭で遊ぶ中で、自然に語彙が増えたり、だんだん言葉が喋れるようになっていくように、

 音楽教育も、遊びの中で気づいたら、楽譜の内容や音の出し方の基本が自然と身についていた。で、教本をはじめて開いた時に、あ!全然難しそうじゃない、わかるし、こうかな、できた、弾ける!、というところから、ピアノを弾く事が楽しくなるようなスタート切ることが望ましいと思います。

 いろいろな遊びから、楽しく、でもしっかり身につくものが多い内容のアクティビティを利用して、音列、鍵盤上のドレミ、楽譜上のドレミ、指番号、など、それぞれの項目が身につくように、指導案を考えていくことは、非常に有効であると思います。そういった理由で、教本を進めていく事よりも「自然な習得」を意識してプレ・ピアノを行っていきます。

GOUDA AKITOMO(音楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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