変形性膝関節症には運動療法を!

みなさん、膝に痛みなどを抱えていませんか?

膝痛を訴える患者さんの9割以上は、「変形性膝関節症」が原因と考えられています。長年の膝への負荷により、膝の軟骨がすり減って炎症が起き、関節が変形してしまう病気です。人によって負担の差は大きくありますが、日常生活において膝には大きな負担がかかっています。例えば歩いている時は体重の5倍以上の負荷がかかっています。このような負荷を長く受け続けて、膝の関節は磨耗して炎症を起こしてしまいます。

変形性膝関節症は高齢者ほど発症しやすく、日本では、60歳以上の約6割が変形性膝関節症というデータもあります。また、現代社会の構造上、運動不足の人が増えました。自動車や電車、エレベーターやエスカレーターなど移動が楽になる設備が普及した結果、歩いたり階段を昇ったりする機会が減っています。

膝関節を支える骨や軟骨、筋肉や靭帯は、日頃から体を動かすことで適度な刺激を与えていないと、少しずつ衰えていきます。現代人にとって、意識して運動をし、適度な刺激を筋肉や軟骨などに与えて膝関節の健康を維持することはとても重要です。

症状の改善には「運動療法」を行うこと

日本における変形性膝関節症の治療では、鎮痛剤や注射療法が主流ですが、他国を見渡すと少し違います、OARSI(国際関節症学会)は、変形性膝関節症については「薬を用いない治療を中心として、薬は補助的に用いること。特に、筋力強化訓練、有酸素運動、可動域拡大の3つ」を推奨しています。

大切なことは、毎日の運動療法です。重すぎない負荷で、できるだけ膝を動かすことをお勧めします。

大腿四頭筋を強くすることが最もお勧め

私たちの日々の生活の中で、膝には常に負担がかかっています。そんな膝の負担を減らすためには「大腿四頭筋」を鍛えることをお勧めします。

大腿四頭筋は身体の中で最も大きく、強い筋肉です。大腿四頭筋は加齢や運動不足により衰えやすい筋肉です。大腿四頭筋が衰えてしまうと膝関節を支える力が弱まって軟骨がすり減り、膝痛を悪化させてしまいます。

膝の機能を高めるには有酸素運動も

適度なウォーキングなどの無理のない有酸素運動は、変形性膝関節症の治療に非常に効果的です。

有酸素運動を行うと血流が良くなり、膝に酸素や栄養がしっかりと供給されるようになります。また、炎症系サイトカイン(細胞から分泌される生理活性物質)の産生が抑えられたりして、痛みが引いていきます。

ただし、痛みを伴いながらも我慢して歩くということではありません。膝に配慮したウォーキングをする必要があります。

まず、膝痛の方は1日の歩数を5000〜6000歩未満に抑えるとよいです。また、水中ウォーキングは特にお勧めです。水の浮力で膝に負担がかからなくなるので、水中であれば長い時間のウォーキングも負担は少ないでしょう。

それでもどうしても痛くてウォーキングは難しいという方は、つかまり足踏みがお勧めです。バーや机などに手を置いて、前傾姿勢でその場で足踏みするだけでも、膝関節の廃用性萎縮を防ぎ、炎症を軽減させることができます。

足上げエクササイズ

1. 椅子に浅く腰掛けて、すこし前かがみになって左足を前に出す。左膝はできるだけまっすぐ伸ばし、かかとを床につける

※ 膝を曲げ伸ばすのはNG。膝に負担がかかり、逆に痛みを引き起こす可能性があります。

※椅子に深く腰掛けると膝は十分に伸ばせません

2. 左ひざを伸ばしたまま、左足を床から約10センチのところまでゆっくりあげ、約5秒間静止。左足を1の位置までゆっくり下ろして2秒ほど休む。

3. 1、2を10回繰り返す。右足についても同様に行う。

足上げ体操

1. 仰向けに寝て、右膝をまっすぐ伸ばす。左足の膝は直角以上に曲げて立てる。両手は力を抜いて、自然に身体の左右に置く。

2. 右膝をまっすぐ伸ばしたまま、床からすこしだけゆっくりとあげ、約5秒間静止する。右足をもとの位置に戻して2秒ほど休む。

3. 1、2を10回繰り返す。左足も同様に行う。

太もも収縮エクササイズ

※太ももに力を入れることで、膝関節の周囲の組織にストレッチ効果が大いに期待できる。

1. 床に足を伸ばして座る。両手は身体の後ろにつく。

2. 膝の下にクッションを置く。クッションの代わりに、バスタオルを折りたたんでクルクルと筒状にまるめたもので代用しても良い。反対側の足は膝を軽く曲げて立てておく。

3. 左足の太ももに力を入れながら、クッションを押しつぶすように5秒間力を入れる。その際に、大腿四頭筋に力が入っているか、手で触れて確認する。

4. 3を10回繰り返す。反対側の足も同様に行う。

つかまり立ち足踏みエクササイズ

1. テーブルの前に立ち、両手をテーブルにつく。手をつく際は、両肩の線が手の位置の真上に来るように、すこし前かがみにの姿勢になるようにする。

2. 1の状態で、テーブルn体重をかけながら無理のない程度に左右の足を交互にあげ、その場で歩いているように意識して足踏みをする。

1分間の足踏みを1セットとして、1日2〜3セットを目安に行う。

自然治癒力を信じること

人間には、元々自らの力で身体を健康な状態に戻す力「自然治癒力」が備わっています。膝関節の痛みで悩む方は、すぐに手術を…と考える方が多いですが、まずは「保存療法」すなわち「運動療法」を徹底的に試してみることを強く推奨します。

GOUDA AKITOMO(声楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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