最近、次のような事に心当たりはありますか?
心当たりがある人は、嚥下機能が低下しているかもしれません。この記事を是非参考にして、誤嚥の予防について考えてみましょう。
生きるためには喉の健康が必要不可欠
みなさん、生きるために必要な身体の部位というと…心臓、肺、肝臓、腎臓、胃腸..など出てくると思いますが、「ノド」と出てきた人は..意外と少ないのではないでしょうか?
しかしノドは、生きるために非常に重要な部位である事に間違いはありません。日々のエネルギーを得るために食べ物を飲み込むこと、酸素を体内に取り込む呼吸、コミュニケーションに欠かせない発声、これだけ重要な気管ですが、他の臓器と比べると二の次、と思っている人は多いかもしれません。
しかし、人間の死亡要因のベスト5に「肺炎」が入っており、その多くの割合を占めるのは「誤嚥性肺炎」です。そのことから、決してノドの健康は軽視されるべきものではないと考えられます。
喉の機能が低下して「誤嚥性肺炎」を引き起こす
嚥下機能が低下すると、気管支炎から誤嚥性肺炎になる恐れがあります。
食べ物を飲み込むことを「嚥下(えんげ)」といい、この嚥下機能の低下は、喉の力が衰えることで生じます。飲み込む機能が維持されていると、食べ物はちゃんと食堂に入っていに向かいますが…嚥下機能が低下すると、食べ物が誤って喉頭を通り器官と肺に入ってしまいます。この症状を「誤嚥」と言います。誤嚥によって本来は空気が入るはずの肺に食べ物が入ってしまうと「肺炎」を起こし、この症状は「誤嚥性肺炎」と呼ばれます。
誤嚥性肺炎は「喉の機能が低下すて起きる」ものです。
老化によって引き起こされる喉頭蓋の故障
喉の中には「喉頭蓋」というご飯をすくうシャモジに似た形の軟骨があります。
この喉頭蓋は、口の中の食べ物を食道の方に飲み込むときに下に倒れて気管に通じる道を塞ぐ役割をしています。
これが嚥下運動の一番大事なポイントなのですが、この喉頭蓋を下げるためには喉頭(喉仏)が上に挙がる必要があります。
この、喉頭を上に上げるための筋肉(喉頭挙上筋群)が衰える事によって、喉頭蓋機能の故障を招き、それによって誤嚥、そして誤嚥性肺炎につながっていくという事です。
誤嚥を予防するために
喉はトレーニングによって鍛えることができます。筋力トレーニングと同様、喉の筋肉が鍛えられて喉の機能が維持されれば誤嚥しにくくなります。
喉仏をあげる喉頭挙上筋群に、喉頭下制筋群(下げる筋肉)を鍛えて、誤嚥予防に努めましょう。身体のあらゆる筋肉は、60代はもちろん、70代、80代でもトレーニングをすれば筋肉がしっかりつきます。
またそれと合わせて、全身を動かす適度な運動と、呼吸機能を鍛えることも非常に有効です。
声がしっかりしている人は誤嚥しにくい
声と嚥下は非常に深い関わりがあります。声が擦れてしまう人は声に誤嚥を引き起こす人は非常に多く、「声のかすれ=誤嚥のリスクが高い」「声のかすれがない=誤嚥のリスクが低い」とのデータがあるそうです。
喉、呼吸トレーニングをすることで発声が改善し、発声が改善すると楽しくおしゃべりができるようになります。また、カラオケなどもできてストレス発散できたり、大声で笑えるようになります。おしゃべりやカラオケを行っているとさらに喉が強くなって、誤嚥からはどんどん遠ざかっていきます。
ノドと呼吸を強くするエクササイズ
頚長筋強化トレーニング
頭蓋骨を支えている「頚長筋」という筋肉をしっかり使えると、喉頭挙上筋、下制筋が緊張することなくリラックスします。そうすると、喉の筋肉の運動能力を上げる事につながります。
エクササイズ1
①おでこの真ん中あたりに手根部(手のひらの手首に近い部分)を当てる。
②手根部でおでこを持ち上げるように、上に向かって力を込める。
③手根部でおでこに力を入れたまま、おへそを覗き込むようにして、頭を前に倒して下に向かって力を込める。
おでこと手根部で押し合いながら5秒キープ。
5秒✖️10回=1セット 一日3セット以上行いましょう!
エクササイズ2
エクササイズ1と逆の運動になります。
①後頭部の少し上あたりに手根部をおく。
②手根部で後頭部を斜め前方向に押すようにして、力を込める。
③手根部で後頭部を押しながら、反対側の力(頭を後ろに傾ける)を喧嘩させる
④後頭部と手根部を押し合いながら5秒キープ
5秒✖️10回=1セット 一日3セット以上行いましょう!
エクササイズ3
①両手で握り拳を作り、顎の下に押し当てる。
②おへそを覗き込むイメージで、頭を前に倒す。
③握り拳で顎を持ち上げるように力を入れ、喉仏が上がっている状態を5秒キープする。
5秒✖️10回=1セット 一日3セット以上行いましょう!
呼吸強化トレーニング
深い呼吸を身につけるためのトレーニングです。浅い呼吸はこまめに息を出し入れするために誤嚥のリスクが高まります。普段から深い呼吸をして、肺機能を高めましょう。
エクササイズ1
①ゆっくりと息を吸い込むます
②すぼめた口から、吸った時間の二倍くらいかけて吐き出します。なるべく限界まで吐き出します。
1セットは2分くらい、1日2セット頑張りましょう。
エクササイズ2
①アの口で、ゆっくりと息を吸い込むます
②今度は速く、限界まで吐き切ります。
1セットは2分くらい、1日2セット頑張りましょう。
プッシングエクササイズ
できれば、腕立て伏せができるとよいですが、できない方はこちら。
①背中を伸ばして、壁に手を当てる
②壁を押しながら力を込めて「イチ、ニッ、サン!」と大きな声を出しながら壁を押して、10まで数えます。
10回で1セットです。1日2セット頑張りましょう!
フレイル予防しましょう!
「フレイル」という言葉をご存知でしょうか?フレイルとは、「健康の状態から要介護へ移行する中間の段階」と言われていて、高齢者の多くはフレイルの時期を経て、徐々に要介護状態へと陥ると考えられています。フレイル予防の一つとして、体操や運動が大切ですが、嚥下機能を維持することは同様に大切です。低栄養はフレイルを引き起こす最大の要因となります。
GOUDA AKITOMO(声楽家、作業療法士)
武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。彰栄リハビリテーション専門学校卒業、作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。
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