ピアノ教育偏重国、日本。ピアノ教育の利点と、知っておくべき偏重のデメリット

 こんにちは、〈声楽・ピアノ教室〉鹿児島音楽教室Sing!の郷田です!今回は表題の通り、日本のピアノ教育についての記事です。

 ヤマハやカワイ。言わずと知れた日本においては最も大きな楽器メーカー、そして最も大手の音楽教室でもあります。ことピアノ教育(厳密にはエレクトーンなども普及させたため鍵盤楽器教育)においては、この2社の功績はとても大きなものです。

 1954年にヤマハ音楽教室が、1957年にカワイ音楽教室が開設され、都市部のみならず地方にもどんどん開校。当時の小学校の学習指導要領でオルガンが必修科目となったことも追い風となり、ピアノが今日までの「習い事の定番」となるほど定着しました。

 音楽の習い事において他国と比較すると、選択する楽器がここまで「ピアノ」に偏っている国は、実は日本くらいではないかと思います。そのくらい、ヤマハとカワイの2社は日本において、ピアノを需要の拡大(音楽教室普及でピアノ人口を増やす)→製造、販売という、ビジネスに成功してきました。

 子供の音楽教育と言ったら..ピアノ。その風潮は、ちょっと偏りすぎているのでは?と個人的に思いますが…しかしピアノは確かに、音楽教育に一番いい楽器であることは確かです。

 ピアノを学習するメリット

 音楽は3つの要素を基礎に成り立っています。リズム、メロディー、ハーモニーです。単旋律楽器(弦楽器、菅楽器、声楽etc..よく考えると、ほとんどの楽器が単旋律楽器です)では、アンサンブルなしにハーモニーを創ることはできません。

 ギターはハーモニーを作れます。しかし、最大で6つの音までしか鳴らせないことと、メロディとハーモニーを同時に表現することは、ピアノほど自由度が高くありません。

 ピアノは、リズム、メロディー、ハーモニーのすべての要素を兼ねながら、どの楽器よりも自由度高く演奏ができる唯一の楽器です。自分という指揮者が、右手左手合計10本の楽団員を駆使して独りで一つの世界を完結させることができるのです。

 また、例えば鍵盤というのは音楽基礎を「視覚的に」わかりやすく提示する役割も果たします。ドレミファソラシドのミとファの間は半音だよな、シとドも半音だよな。D Dur(ニ長調、Dメジャーキー)だとド♯、ファ♯がつくよな。

 ピアノを習うことによってこれらの音程の構造を当たり前に理解している人は、音程を作る楽器(特に声楽)で音程の距離感を考えて、より正しい音程を作ることができます。

 私は専門の楽器が声楽なのですが、子供のピアノ教育には積極的です。上記のようなピアノのメリットがあり、将来的に声楽をやることになる人たちにも、是非小さい頃のピアノ体験をしておいてほしいなと思うからです。

ピアノ教育偏重のデメリット

 一方で、デメリット(以下の事について正しく理解しているとデメリットとならないと思いますが)は…

打弦楽器しか親しんでこなかった人は…という意味でのデメリットです。

 その、打弦楽器に偏った音楽教育が弊害になる例(実は非常に多い一例です)としては

歌う時にレガート(スラー)に苦戦するという弊害がよく起こります。

 ピアノという楽器は、88個の音を全て調弦してあります。88ビットのデジタルである、というとわかりやすいでしょうか?

 しかし、歌の音程というものは実はグラデーションになっています。ドとレの間にいくつもの音の高さがあり、スラーで歌う(レガートで歌う)際に、このグラデーションを伝って「カーブするように」音程を作る技術が必要になります。

 ピアノに幼少期から親しんで、音程とはラ=440hzのドレミファが絶対的である、という思考で固まっている人は、この音程のカーブ、というテクニックをなかなかおぼえられないといいう傾向があります。(経験則からそのように思います)

 ですので、このデメリットになりうる事をしっかりと理解して、幼少期には点の連続で音楽を作っていく楽器に偏る事なく、バイオリンや歌などの「線を描いて音楽を作っていく楽器」にもたくさん聴き、親しんでおくことも同時にお勧めします。 

GOUDA Akitomo 音楽家 作業療法士

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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