新しい時代の音楽研鑽のあり方

  〜「先生主体」ではなく「生徒主体」へ

 20数年前(私が音大の学生だったころ)の音楽レッスンは、「先生の知識、経験、技術を生徒に伝授するもの」という指導モデルでした。当時、同級生たちと(行きつけの居酒屋で?)「君の先生はこんな考え方で教えてるんだね、僕の先生はこうで..」という情報交換をよくしていました。そして「いかに先生の教えることを守って、〈言われる通りに〉レッスンをこなしていくことができるか」という考えを持った同級生が多かったように、今、振り返ると私は感じます。そしてまだこの時代は先生の「レッスンの質」=「生徒の成長」という図式が多少当てはまっていたのかもしれません。

 しかし今や情報化社会が進み、時代が変わりました。スマートフォン一つで手軽に「様々な人のボイトレ理論(YOUTUBEなど)」にアクセスできる時代となりました。著名な先生のレッスンなどもネットを介して「聴講」ができ、(良くも悪くも)様々な価値観に接することができます。

 そのような環境にあるこの時代に、従来の「質の良いレッスンの提供こそが生徒への絶対的成長育成方法」という指導モデルでは、おそらく不十分です。今の生徒は様々な情報から生まれた信念をある程度持ち、先生の考える信念と時に対立してしまう事(さらにそれは、生徒が本音を言えず、目に見えない形である事)がしばしば起こっていると考えられます。

 新しい時代の音楽教育では、「先生が生徒をよく観察し、コミュニケーションを通して生徒の考えを熟知すること」が最も重要であり、その上で生徒が考えている方法が適するのか適さないのか、適さない場合はその説明をちゃんとできること、そして先生が推奨する正しい発声法や音楽表現を時に提案し、時に生徒の認知に修正を施すこと、などが問われてくるのではないかと私は考えています。

 当教室では、「主体は生徒にあり、先生は師弟関係ではなく協力関係を結ぶもの」を基本理念としています。そして何よりも、学童期から大人の方まで「成長しながらも音楽を、歌を、楽しむこと」をモットーに生徒さんと関わっていきます。

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