みなさんこんにちは、〈声楽・ピアノ教室〉鹿児島音楽教室Sing!の郷田です。
今回は、子供の成長、教育についてのお話です。子供とのレッスンでうまくいかないときに先生が対応するための方法や考え方のお話ですが、親御様の子育てにも通ずる点があると思います。参考にしていただきましたら幸いです。
「つまずき」に気づいてあげること
問題行動を起こして手がかかる子どもの行動、というのは音楽レッスンに限らず、学校で、家庭で、教育にはついてまわるものですよね。でもそこには必ずと言ってよいほど、(目に見えにくい)子供の「つまずき」が潜んでいることがあります。
例えば、譜読みのつまずきを隠すかのごとく、レッスン中にふざけはじめる子。運指がうまくいかない事をごまかすかのように、わざとめちゃくちゃに鍵盤を叩く子もいます。感情の言語化が苦手なために、粗暴な態度でしか気持ちを表現できない事も時には出てくるのです。
しかしそのような子どもたちの姿は、「ふざけているように見えてはいるけれどその背景に、楽譜の読み方に困っている、指が上手く扱えなくて困っている」とか「わざとめちゃくちゃに弾いているけど、不器用さを隠そうとしている」とか「イライラを表出するのは、感情を言葉にするのが苦手だから」という背景がある可能性が大いにあるというサインかもしれません。
つまずきの原因として考えられる「姿勢問題」
そして、そのような時の子供の姿勢に注目してみると…座っている姿勢が定まっておらず、真っ直ぐになれずに何かに寄りかかる、という姿勢を取っている事がほとんどです。そしてそのような姿勢は、態度が悪いように見えてしまいます。
姿勢を維持するためには、腰・股関節・膝などの「関節の角度」の維持が必要になります。それと同時に、「適度な筋肉の収縮」を維持、調整し続けなければなりません。「関節の角度」や「筋収縮」の調整は、身体内部の感覚の一つである「固有感覚(固有受容感覚)」という感覚が担っています。実は、この固有感覚の反応の低さ(「低緊張」と呼びます)によって、姿勢保持の「つまずき」は起こっていると最近言われています。
関節の角度や筋収縮の調整が難しいとなれば、姿勢の保持のつまずきだけでなく、落ち着きがない態度、行動面や対人関係面の「つまずき」も必然的に引き起こされます。そして前例でもあげた「譜読みのつまずき」「運指のつまずき」なども、「姿勢」が原因によるところは(多かれ少なかれ)ある、といえます。
子供の身体的な点も含めた問題を検討せずに「態度が悪い」「意欲が低い」と決めつけていると、注意を促したり、叱ったりすることだけに必要性を感じ…叱ってばかりいると、子供は更にどうして良いのかわからなくなり感情的になってしまう。そうすると、教育の悪循環にはまってしまいます。
そこで、姿勢の崩れに対するアプローチを考えていこうと思います。
姿勢の崩れに気づいたらレッスン内容に変化を
姿勢の崩れに気がついた時のポイントは、「レッスン内容の改善」です。すなわち、姿勢の崩れが見られる子どもを注意する事ではなく、レッスンが「退屈」、「先生の話が長い」、「手持ちぶさた」といった印象をもたれているというところを見直すということです。
例えば、鍵盤や譜面から離れて、マット鍵盤やホワイトボードなどを使って「譜読み」「運指」に繋がるエクササイズを行ったりするなど、新しい気分になり且つ、能動的に参加する場面を多くつくってみる事を試みる事だと思います。この他にも、先生生徒間のディスカッションを多く行ったり、譜読みが終わっている曲に立ち返って「姿勢」を見直していく取り組みをしてみたり、一度、退屈に思っている取り組みから離れてみる事も大切かもしれません。
見た目の印象で先生が感情的に指導する、という事はできるだけ避けて、原因の根本を検討してそこにアプローチしてみる、事が大切なのではないか、と考えられます。
GODA AKITOMO(音楽家、作業療法士)
武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。
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