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みなさん、こんにちは!声楽・ピアノ教室「かごしま(鹿児島)音楽教室Sing!」の郷田です!
今回は、ブルグミュラー25の練習曲より第9番「狩猟」を解説していきます!
タイトルについて
「狩猟」というタイトルがついていますが、いわゆる「生きるための、食べていくためのシビアな狩猟」とは少し違った狩りだと思われます。
キツネ狩り(2004年に施行された「狩猟法」により現在は禁止されています)に代表されるような、昔よく行われていた「スポーツハンティング」ではないでしょうか。
なぜなら、全体として「狩り」の緊張感が常にただようような曲ではなく、特に楽節Aでは”右手のハネるリズム”が特徴的ですよね。非常にリラックスして狩りを楽しんでいるような印象の曲です。すなわち、競技としての狩り、という解釈がふさわしいのではないかと思います。
形式
前奏+楽節A+楽節B+楽節A+楽節C+楽節A-Coda(終結部)という構成です。
これまで(8番までの)ブルグミュラーの曲と比べてすこし形式が難しくなったな…と感じるかもしれません。
このように、複数の楽節を挟みながら、楽節Aを繰り返すという形式を「ロンド形式」と呼びます。
この曲の”A-B-A-C-A”といった構成は「小ロンド形式」。
例えば”A-B-A-C-A-B-A”というもう少し拡大された構成は「大ロンド形式」。
「ロンド形式」にも様々な構成、サイズのものがあります。
前奏
前述したように、スポーツハンティング的な狩猟、という意味合いの曲です。
最初の前奏は、その「始まるよ!」という合図を角笛で示しているような、そんな風景を想像してみましょう。
重々しくならないように手首の上下を使って、軽く弾むように弾けると良いですね。その時のポイントは、短い音符のタッチ時に鍵盤から指を離して弾かないことです。
鍵盤から指が離れるほどに、運動距離が長くなると、軽快にリズミカルに弾くことが難しくなりますので参考にしてください。
楽節A
右手のリズムはオクターブのスタッカートですが、これは何を連想しますか?
馬の走る音、ではないでしょうか?
そして左手のメロディはというと?
これは、角笛の音ではないでしょうか?角笛は、狩りで遠くの人へ合図を送る道具として、昔から使われてきました。そして、この角笛が進化して生まれた楽器が「ホルン」なんですね。
そう考えると、左手のラインはなるべくホルンを吹いているように、マルカート(音の区切りを少しつくって)で演奏できると良いと思います。
楽節Aはフォルテに始まって、4小節目からデクレッシェンド、そして繰り返しのフレーズはピアノで記譜されています。
これは、馬の蹄の音と、狩猟犬の足の音の対比を表しているような…個人的にはそんな気もします。
正解はブルグミュラーさんが「これです」とは言っていないようですので、個々で考えを持っておくと良いですし、それがみなさんの「解釈」へつながります。
技術面の話になりますが、右手のオクターブのスタッカート、どうも命中率が悪いな…という方はいますでしょうか?
まずは1の指のポジションを動かさない事が大切です。2の指の打鍵ポジションも、1の指のポジションが変化しないためには、1の上あたりを狙うようにしてみましょう。
あとは、5の指を正しいポジションまで伸ばせるかがポイントです。これはゆっくりの反復練習で、距離感をしっかり指にインプットさせましょう。
楽節B
un poco agitatoと書いてありますよね。
un pocoは「少し」、agitatoというのは…イタリア語でいろんな意味を含んだ言葉です。例えば「激しく、苛立つ」と言うような意味で使われることもあれば、「不安や落ち着きのなさ」という意味を含むこともあります。
ここではun poco「少し」という前置きがありますので、激情的な興奮ではありません。そう考えるとおそらく…
狩られる、つまり「動物側」の「落ち着きのなさ」という情景を表しているのではないかと考えられます。
そして楽節Bが終わると、楽節Aに戻る。
楽節Aは、狩人や馬や犬の「狩りを楽しむ情景」。楽節Bは「動物側の心理描写」。では、次の楽節Cは何を表しているのでしょうか??
楽節C
イ短調になりましたね。dolenteと書いてあります。
「悲しげに」と言う意味です。ですので短調の非常に悲しげなメロディが流れ始めます。
楽節Cは、動物が捕まってしまう悲しみ、つらさ、が表現されているのではないでしょうか。
ここで大切な事。バイエルや古典派ソナタなどもそうですが、左手の分散和音3連符についてです。
このような左手の音形は、ハッキリと強く音を出してしまうとメロディの邪魔になりますよね。鋭い輪郭をあまりつくらず、柔らかいタッチを心がけましょう。
コーダ
楽節Cから、また楽節Aに戻り、最後はコーダでこの曲は終結します。
前奏、コーダ共に、P→クレッシェンド→F、そしてF→デクレッシェンド→P、大きな強弱変化が特徴的ですよね?
この意味を考えてみましょう。
遠くから狩人たちが近づいてくる。遠いものの音は小さく感じれて、近いものの音は大きく感じれますよね。
なので、この強弱変化は、前奏で「狩人たちがやってくる」、コーダでは「狩人たちが帰っていく」、その距離感を表現するようにしてみてください。
GOUDA AKITOMO(音楽家、作業療法士)
武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。
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