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こんにちは、〈声楽・ピアノ教室〉鹿児島音楽教室Sing!の郷田です!
今回は、ブルグミュラー25の練習曲より第2番「アラベスク」について解説していきます。まず、アラベスクって言葉…どんな意味かご存知ですか?
フランス語で「アラビア風」という意味です。そしてアラベスクというと、アラベスク模様が有名です。なんとも幾何学的で幻想的な模様です。
音楽でのアラベスクとは、この装飾のように非常に細かい音の題材、装飾を組み合わせて作り上げた幻想的な楽曲、と理解すると良いと思います。
こうやって楽譜を見てみると、細やかなフレーズ、装飾が見えてきませんか?
曲の構成、形式
アインガング+楽節A+楽節B+楽節A+コーダの3部形式になっています。
楽節、コーダの意味は、前回記事「素直な心」で説明しましたが、楽節は文章の段落のようなまとまりの事、コーダはエンディング、という理解でよいと思います。
さて、アインガングってなんでしょう???ドイツ語なんですけれど、楽曲の「前置き」「導入」というような意味です。因みに曲の冒頭ではなくても、次の楽節が始まる前などにもこのアインガングを用いることもあります。メロディが開始される前の「いくよー」という合図のような…そんなイントロダクション、と説明するとわかりますでしょうか??
速度表記について
前回、「素直な心」でも言及しましたが、ブルグミュラー25の練習曲集のテンポについてです。指定テンポはかなり速いので、少なくとも、音楽的に表現をする余裕がなくなるようなテンポ設定をせず、表現する余裕のあるテンポ設定を心がけましょう。
Allegro Scherzandoと書いてあります。アッレーグロは「軽快に速く」、スケルツァンドの意味としては…イタリア人はよく会話で「スケルツォ!?」と言うんですが、「冗談でしょ!?」と訳する事ができます。つまりスケルツァンドは、「冗談」という意味が含まれています。「冗談を言うくらいに軽々しく」表現しましょう、と解釈する事もできます。つまり、この「アラベスク」は、決して深刻な音楽ではなく、力を入れず、まるで冗談を言う時のように軽やかに、演奏しようと思ってください。
楽節A
楽節Aを見ると、最初の4小節はⅠ→Ⅳ→Ⅰという和音進行、後半の4小節では平行調の転調(イ短調→ハ長調)をしていて長調に変化、解決しています。
この調性の変化をしっかりと理解、感じる事は大切です。楽節A前半で、イ短調の上行形のメロディがクレッシェンドしていって緊張感が高まっていく、そして後半で長調に転じて緊張感が緩和していく…この変化を感じ取って後半は比較的柔らかいタッチを心がけてみましょう。
少し細かい話ですが、スラーがどのように書かれているかに注目してください。
7小節目の8分音符(ミミファ)は、2番目のミからスラーが書かれていますよね。例えばヴァイオリンのボーイング方向…みなさん想像できますか?上げ弓(アップ)と下げ弓(ダウン)があります。上げ弓よりも下げ弓の方が音圧は通常高くなります。
最初のミはアップでアプローチして次のミファはダウンする、そのような奏法をするようなフレージングを作ってみましょう。
ミミファレを全てスラーで、つまりオールダウンで奏でるようにすると、軽快さを損ねてしまうと思います。
そして、8小節目のレはアクセントが付いていますよね。2/4拍子の通常アクセントは1拍目、2拍目は弱拍にあたりますが、2拍目にアクセントをつける事によってリズムの変化を狙っています。シンコペーションというやつですね。ここのアクセントは、しっかりと出してメリハリをつけましょう。
楽節B
楽節Bを見てみましょう。右手は、付点4分音符+8分音符。スラーが大きくついています。ここは歌うようなレガート(カンタービレ)で。楽節Aのメロディは楽節Bでは左手が担当しています。
そして、楽節Bの4-5小節目(全体の14-15小節目)にラの1オクターブ跳躍があります。躍動感を持って弾きましょう、という事なのですが、
このようなところは、サラッと次の小節を跨いでいくのではなく、大事に跨いでいくようにしましょう。若干テヌートしてもおかしくはないくらいです。弦楽器で音を跳躍する時は、運指の時差がありこれが演奏の味となるのはなんとなく…わかりますでしょうか?
ピアノという楽器はただでさえ、点の集合によって音楽を作ります。メトロノームの通りにテンポを守る事(ある意味では大切ですが)だけでは無感想な演奏となってしまいますよね。
それから同じ部分、ラに跳躍した時の背景…つまり和音です。ドが半音シャープして、d moll(ニ短調)に一時転調をしたかのような、色彩の変化を感じますか?
この箇所は、跳躍に加えて、借用和音を用いる。そうすることによって大きなテンション、盛り上がりを引き出しています。
コーダ部分
最後にコーダ部分です。
右手のメロディが上行していき最後の最後まで盛り上がりを見せていますね。そして、1番最後、右手と左手が1オクターブでユニゾン下行形。楽曲全体を通して、上行形のメロディであったのに対して唯一の下行形のメロディ。そして和音はなく、ユニゾンによりメロディを非常に厚みを持たせている、この点もこの曲唯一の点です。
1番「素直な心」では、アーメン終止していると申しました。おさめて終わっている。でもこの2番「アラベスク」ではコーダは曲の終わりに向かって加速していってユニゾンで最も高揚します。そのまま曲が終わる。終わり方が1番と2番では正反対。こういった所に注目しても、面白いと思いますよ。
最後のユニゾンは、右と左がバラバラとならないように、しっかり歩調をあわせて弾きましょう。
という事で、今回はブルグミュラー25の練習曲より2番アラベスクの解説を行いました。
次回は、3番「牧歌」の解説をしたいと思います。→こちら
GOUDA AKITOMO(音楽家、作業療法士)
武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。
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