ブルグミュラー、他の曲はこちらから↑
こんにちは、〈声楽・ピアノ教室〉鹿児島音楽教室Sing!の郷田です!
ショパンをはじめとして、様々な作曲家のピアノ「練習曲集」がありますよね?その中でも、「ブルグミュラー25の練習曲集」は、ピアノ初学者の「音楽性を高める」事を目的として書かれてある、という点が特徴で、素晴らしい曲集だと私も思います。
という事で、今回の記事から「ブルグミュラー25の練習曲」について、ひとつひとつポイントなどを書いていこうと思います。今回は第1回という事で第1番「素直な心」を扱います。
第1番 素直な心
テンポについて
まず「素直な心」のテンポを見てください。Allegro moderato♩=152と書いてありますね。
この♩=152というテンポ指定…実際に演奏してみるとわかりますが、すごく速いです。。この1曲目の「素直な心」に限らず、ブルグミュラーの指定テンポは、初学者にとって、特に子供にとっては非常に速いと感じます。「音楽性を高める練習曲」である事から、このテンポ(BPM)の通りに最初から弾こうとするのは多くの学習者にとって無理を強いる事になりますので、テンポは無理に合わせる事はないでしょう。テンポで弾くことによって「音楽的」な演奏が崩れるようなら、ゆっくり弾いて「音楽的」な演奏が成立する方を選択すべきです。
アッレーグロ・モデラート、という速度表記なんですが、アッレーグロというのは元々「明るい、軽快」という意味があります。速度表記の場合は「速く」という意味を持ちますが、忙しいというよりも「軽快と感じるような速さで」と解釈すると良いかなと思います。モデラートというのは「節度を持って」という意味を持ちます。「軽快な速さ、しかし節度を持って」と理解して、では演奏者が実際にどのくらいのテンポで演奏するのか、という事は自分の技量とも相談しながらご自身のベストなテンポ設定する事をお勧めします。
楽曲構成
この曲、まず1番最初にみてもらいたいのは、形式、構成です。
A楽節+B楽節+コーダ、という構成になっています。
楽節というのは、まとまりのある一つの単位を表します。的を得ているかはわかりませんが、よくAメロ、Bメロ、サビ…なんて言葉聞いた事ありますでしょうか?文章で言うと、段落で区切ってある、という「まとまり」を「楽節」と解釈していいと思います。
弦楽四重奏を頭に置く
まずこの曲は、音の数も大凡4声で書かれてありますので弦楽四重奏でこの曲を想像する事はお勧めします。
その上で、では、A楽節とB楽節を比較すると、その違いはどういった所にあるでしょう?
A楽節は、左手が和音で右手がメロディという構造になっていますよね?対してB楽節は、最初の4小節で左手が旋律の形を取っています。次の4小節では、左手は再度、2分音符や全音符の和音の形をとっています。
第一ヴァイオリンがメロディを担当している時は、〈第二ヴァイオリン、ビオラ、チェロ〉は和音、つまり縁の下の力持ちをやっています。この曲は「素直な心」というタイトルからもわかる通り、優しい雰囲気を持った曲です。和音はアタックの強い音ではなく、弦楽器のボーイングのような柔らかく持続的な響きである事が望ましいので柔らかい音質を心がける必要があります。左手3和音は脱力して柔らかいタッチを心がけましょう。
対して楽節Bでの左手の上行形は、チェロのような演奏を心がけて「ここは自分が主役だよ」という主張のあるタッチを心がけます。
良いピアノ演奏というのは、まるでオーケストラを聴いているかのような錯覚を起こさせるものです。ダイナミックの違い、もちろんそうですが、音質の違いをどうやって生み出すのか。左手と右手のタッチが違えば、全体の音の響きに立体感が出てきます。そういった意味で、和音とメロディ、この区別はしっかり理解しましょう。
臨時記号、一時転調への解釈
さて、右手のメロディですが、A楽節の中で印象に残る部分は、みなさんどのようなところですか?
例えば、7小節目の左手のシャープ…例えば黄色いお花畑の中に、ポツンと赤い花が一輪咲いていたら…おや?と思いませんか。
そういった意外性のある和音というのは、サラッと弾くよりも、「大事に」弾こうとしてみてください。きっと、そういった感じ方をするだけで、音楽は生き物になってくるはずです。
そういった意味で、クライマックスのところ、13小節から14小節にかけての部分。
13小節でフラットやシャープがたくさんでてきて、音の緊張感が高まります、でも14小節に入ると、Cメジャー(ハ長調)の響きに戻ります。この14小節は、ハ長調に帰ってきた…つまり自分の家へ帰ってきたような「安心、安堵」と共にメロディが高い音に跳躍していますので、「開放されたような」、そんな雰囲気をまず自分で感じる事が大切です。もう一つ例えば、少しトンネルに入ってきて不安になった、でもトンネルを抜けたら…美しいお花畑が広がっていた!そんな雰囲気など想像したりして、「安心と開放」を音質で表現できるように努めましょう。
最後にコーダの部分。
コーダとは、「終始部」という意味の言葉です。エンディング部分と理解していいと思います。
この曲のコーダは、「アーメン終始」を2度行うような書かれ方をしています。アーメン終始とは、キリスト教などの礼拝の讃美歌がありますよね。歌詞を歌い終わった時に「アーメン」といって終わるんですが、決して派手に「バーン」と終わるのではなく、静かにお祈りして終わりましょう「アーメン」と、穏やかに終始します。
この曲の最後も、「最後にお祈りしましょう、アーメン」と言って眠りに入る。そんな解釈をして弾いてみると、よい曲のおさめ方というのが理解ると思います。
さて、このような感じで次回は2番の「アラベスク」の参考になる記事を書いていこうと思います。→こちら
GOUDA AKITOMO(音楽家、作業療法士)
武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。
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