ピアノ学習者のための、指の解剖学〜第4回〜親指、小指の筋肉

 こんにちは、〈声楽・ピアノ教室〉鹿児島音楽教室Sing!の郷田です。

 ピアノ学習者のための指の解剖学、と題しまして今回は第4回目です。前回までの「筋肉の基本特性」「骨の構造、浅指屈筋、深指屈筋」「虫様筋、骨間筋」をまだ読んでいない方は、チェックしてから読まれる事をお勧めします(筋肉の起始、停止、運動方向、と言われて???の方は特に!)

 小指を曲げるのに関わる筋肉は、小指外転筋、その中に短小指屈筋、そして1番深いところに小指対立筋、という3種類の筋肉があります。

 ここ、小指の根元のところ、プクッと膨れていますよね、ここを小指球、といいます。この3つの筋肉は、この小指球に存在しています。

 そうです、実は小指というのはか細い指だと思っている方多いと思いますが、筋肉はこれだけ豊かなんですよね。

 小指外転筋は、起始は豆状骨という骨、停止は基節骨についています。この側面から見てもらうとわかると思いますが、こういう方向で筋肉が収縮して、小指を外転させるという動きをします。

 短小指屈筋は、字のごとく、小指を屈曲させる短い筋肉なんですね。有鈎骨という骨についていて、こういう方向で収縮する。つまり、若干親指に近づくような方向で小指を曲げていきます。

 それから小指対立筋。これは短小指屈筋よりもさらに短い筋肉で、起始は有鈎骨、停止は、中節骨になっています。短小指屈筋と比較すると、より外側についていますよね。小指と親指を近づける運動を解剖学や運動学では「対立」と言ったりするんですね。この小指対立筋は、小指をより親指に近づけるための筋肉なんですね。

 さあ、そして、最後に、親指です。やはり、この筋肉の全体図を見てもですね、親指というのは1番、なんといいますか、独自路線で動く指だということわかりますでしょうか?

 長母指外転筋、短母指外転筋、長母指屈筋、短母指屈筋、母指内転筋、母指対立筋

 やはり、親指は1番力強いということがわかりますよね、これだけの筋肉が関わっています。

 長母指外転筋と長母指屈筋は、長い筋肉ですよね。2つとも前腕の骨間にくっついています。そこが起始で、長母指外転筋は中手骨、長母指屈筋は末節骨に停止してます。

 あ、大事なことでしたが、母指というのはほかの指と比べて、骨が1つありません。中手骨、基節骨、で、中節骨がなくて、末節骨。なので、母指はMP関節と、IP関節、PIP、DIP2つの指節間関節ではなて、IP関節、ひとつだけですよね。

 ちなみに、親指は関節の動きがほかの指と比べてかなり自由なこと、お分かりでしょうか?

 それから、親指の運動方向について、親指というのは2つの方向に運動ができるんですね。専門的には、掌側外転と、橈側外転です。

 掌側外転というのは、こういう動き。掌側への動き、で、橈側外転は、この橈骨側に動きますよ、という親指の動きのことをいいます。ので、この反対は、ピアノでいうところの指くぐりの時に使う運動ですが、これは、尺側内転、と呼んだりします。これも覚えておくといいと思います。

 話が戻ると、長母指外転筋は、親指の橈側外転を担当します。長母指屈筋は親指の末節骨についていますので、このIP関節屈曲をおもに担当しています。2から5の指でいうところの、浅指屈筋や深指屈筋のような役割ですね、長い筋肉ですからね。

 それから、短母指外転筋は舟状骨のあたりに起始、第一中手骨についていて、母指の掌側外転を担当しています。長母指外転筋とは違う方向の作用だということがわかりますよね。

 そして、母指内転筋。母指内転筋という筋肉は母指とこの2と3の指を連絡している筋肉です。ので、この方向で動いて、母指を2、3の指に近づける、という役割を担っています。

 そして、母指対立筋。さっき、少指対立筋がありましたよね、それとおなじように、小指側に親指を近づける、そんな筋肉です。

 はい、ざっとでしたが、ピアノで特に関わりが非常にある指の筋肉を紹介いたしました。

 最後にですね、指の筋肉を紹介したと言っても、ボデイビルダーの様にこれらの筋肉を意識して硬く鍛え上げることがピアノ演奏を強化する、ということではないことをお断りしておきます。

 例えば、浅指屈筋や深指屈筋、これらは長い筋肉です。細かいパッセージを演奏するときにあまりにも働いてしまったら、つまりPIP、DIP関節をあまりにも働かせてしまったら浅指屈筋、深指屈筋、活用されます。この大きくて長い筋肉は、基本的には強い力を出す時に活用される筋肉なので、細かいパッセージで不都合が出てきます。

 速いパッセージでは、小さい筋肉、虫様筋や骨間筋群の活躍が必要で、作用を考えるとやはり、mp関節中心に指が動く必要があったりします。

 あくまで、演奏においては筋力を強くするということよりも、運動能力が上がる、ということが大切だと考えられます。

 そしてもうひとつは、今回紹介していない、手首、肘、肩の可動というのも脱力をしたり、手のポジショニングをとったりする上で非常に大事ですので、指先だけで演奏を考えない様にしなければいけないこともご理解ください。

 ただ、ご自身の指の動きを今一度改めて検討して見て、少し無理がある動きをしていたとしたら、その原因を考察すること、そして、理にかなった動きや感覚に修正していくためのさんこうとして、この4回の記事を参考にしていただければ幸いと思います。

 ピアノを弾く時の背骨の重要性→こちら

GOUDA AKITOMO(音楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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