ピアノ学習者のための、指の解剖学〜第3回「虫様筋、骨間筋群」

 

 みなさんこんにちは、〈声楽・ピアノ教室〉かごしま音楽教室Sing!代表の郷田明倫です!

 ピアノ学習者のための指の解剖学、と題しまして今回は第3回目の記事です。前回までの「筋肉の基本特性」「骨の構造、浅指屈筋、深指屈筋」をまだ読んでいない方は、チェックしてから読まれる事をお勧めします(筋肉の起始、停止、運動方向、と言われての方は特に!)

浅指屈筋、深指屈筋は速いパッセージにむかない

 よく、ピアノ弾くときは、「PIPやDIP関節(指先の2つの関節)で弾くのではなくて、MP関節(3番目の関節)から弾くんだ」ということが言われますが…

 PIP、DIP関節を動かす(屈曲させる)筋肉というのは、前回紹介した非常に大きな筋肉の浅指屈筋、深指屈筋であるという点がひとつあります。特に速いパッセージを弾くときは、もっと小さくて細かく動く筋肉のほうが適しているということがあるからだと思います。※筋肉というのは大きい程粗大な運動が得意で、小さい程微細な運動が得意だからです。

 ではその細かい筋肉、さっきの2つの筋肉よりも小さくて、短い。三角形のような筋肉があって、これを虫様筋といいます。

虫様筋の特徴

 この虫様筋、ちょっと変わっている筋肉なんですね。第1、第2、第3、第4虫様筋と4つの独立した筋肉があって、それぞれ、起始が中手骨の根っこの方…「深指屈筋腱」という腱があってここについています。

 で、停止はというと、くるっと半回転ねじれながら基節骨の側面部分に停止しているんですよね。厳密にはここにある「総指伸筋腱」という指を伸ばす筋肉の腱にくっついています。

虫様筋の働き

 停止から起始に向かって筋肉が収縮すると…まずはこのMP関節を屈曲する、という作用をします。

 あとは、このPIP関節とDIP関節を伸展させる作用も持つと言われています。

 これは、ちょっと難しいんですが、あえて簡単に説明すると

 江頭2:50のこの画像を見ていただきたいと思います。

 これが虫様筋を使ったときに筋肉の動きの代表だと思ってください笑。

 このように(指を突き出す動き)作用をするのが虫様筋の働きです。これが、ぼくの解剖学の先生はこうやって説明していましたけど、当時すごく納得してしまいました笑。

 そしてもう1つ、MP関節を屈曲させる筋肉を紹介します。

掌側骨間筋

 虫様筋と同じくらいのサイズの筋肉があって、掌側骨間筋という筋肉があります。虫様筋は4つありましたが、掌側骨間筋は、3つの独立した筋肉です。虫様筋より1つ少ないんですね。

 解剖学的立位肢位からみてなんですが、第一掌側骨間筋は、第2中手骨の内側の部分から、第2基節骨の内側。なので、第一虫様筋が外側にぐるっと回っているのに対して、掌側骨間筋は内側に回っている、という点も面白いですよね。

 第2掌側骨間筋は第4指を担当していて、第3掌側骨間筋は、第5指を担当しています。で、第3、つまり中指には掌側骨間筋はついていない、というのも特徴的だと思います。

 そして、先ほど第一掌側骨間筋は内側についていると言いました。でも、よく見ると第2,3骨間筋は外側についているんですね。で、それぞれ、基節骨から起始にかけてこういう方向に筋収縮が起こるので、まずはMP関節の屈曲を行なっています。

 で、それだけでなくて、この2、3、4の指を閉じる、という運動を行なっている。(内転)これが掌側骨間筋の働きになっています。

 そして、指を閉じる筋肉、があったら、指を開く筋肉も忘れてはいけません。掌側、の骨間筋があったら、背側の骨間筋、というのがあります。

背側骨間筋

 背側骨間筋です。この筋肉が、手を開く役割を担っています。

 第一背側骨間筋、名前の通りに手の背面についているんですが、これですね、背側の場合の第一は、第一中手骨つまり親指と、第二中手骨についているんですね。第二が2、3の間。第3が3、4の間、そして、第4まであります。3、4、5の間についています。

 作用としては、手を開くことと、あとは、MP関節を伸展させるという作用もしています。

 たとえば、ピアノでオクターブが続くところ、指を開きっぱなしにしているとMP関節が伸展されて、指が曲がりづらくなる。その状態で無理に演奏すると、手が硬直していきそうですよね。オクターブでは指を開いてあまりキープしすぎないと言われるのはそのためかなと思います。

 さあ、今回は、非常に細かくて速い指の動きを可能にしている「虫様筋、骨間筋群」の話でした。

 次回は、親指、小指の筋肉についてです。実は、親指、小指は2,3,4の指にはない、「独立して曲げる筋肉」というものがたくさんついているんです。→次の記事「親指、小指の筋肉」

ピアノを弾く際の背中の重要性→こちら

ではまた、次回の記事も参考にしてください!

郷田明倫(音楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。彰栄リハビリテーション専門学校卒業、作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

Follow me!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次