ピアノ学習者のための、指の解剖学〜第2回「指の骨、浅指屈筋、深指屈筋」

 みなさんこんにちは、かごしま音楽教室Sing!代表の郷田です!

 ピアノ学習者のための指の解剖学、と題しまして今回は第二回目です。前回の「筋肉の基本特性」をまだ読んでいない方は、チェックしてから読まれる事をお勧めします(筋肉の起始、停止、運動方向、と言われて???の方は特に!)

 前回の記事で、筋肉の基本特性、しっかりと理解していただいたと思います。では第二回の今回は、手の骨の構造を知った上で、浅指屈筋、深指屈曲、を見ていこうと思います。

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手、指の骨構造

 まずは筋肉の話の前に、骨と関節の解説をしたいと思いますます。骨に筋肉というのは付着していますので、この骨の位置や名前について少し知っておく必要があるんですね。

 指の骨というのは4つあります。根本から中手骨、基節骨、中節骨、末節骨と言います。

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 ちなみに紛らわしいのが、「中手骨と中節骨」と似た名前があって、この二つは全くの別物の骨ですので注意して覚えてください。

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 で、この関節の名称も覚えておくといいと思います。中手骨と基節骨を中継している関節、を、MP関節、といいます。中手骨を英語でmetacarpal,基節骨をproximal pharanges、それぞれの頭文字をとってMP関節。で、基節骨中節骨の関節をPIP関節といいます。proximal pharanges とinter pharanges(中手骨)の関節、それから、末節骨と中節骨で作る関節を、DIP関節,distal phrangesとinter pharangesの頭文字。

 あと、中手骨よりもさらに手首側にある、手根骨というのも8個あってそれぞれ名称あります。覚えられる方は覚えてみてください。豆状骨、三角骨、月状骨、舟状骨、大菱形骨小菱形骨、有頭骨、有鈎骨。私は昔、国家試験勉強で「父さん月収、大小ありがとう、有効に使うよ」の語呂で覚えました。

 ではやっと本題に入ります、この画像は左手の手のひら側を見ています。

 ちなみに今回の指の筋肉の勉強ですが、どちらかと言ったらピアノを弾く上では、伸筋群よりも屈筋群のほうが重要と思います。なので、指を曲げる系の筋肉のみを今回は見ていきます。(指を伸ばす→伸筋、指を曲げる→屈筋、が働く)

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 ここになんかこう細い腱がありますね。これは指の筋肉の腱なんですよね。この最後が腱になっている筋肉、浅指屈筋、と言います。

  字の通り浅いとこにある指の屈筋ですね。起始が上腕骨内側上顆(じょうわんこつないそくじょうか)という実は、上腕骨からついている長い筋肉なんですね。

 なんでここがナイソク、つまりは内側なのかと言いますと、解剖学的では体のどこが内側でどこが外側で、という位置関係を全世界で共通化しているんです。

 そうしないと、例えば肘を返したりすると、内側と外側が逆になったり…混乱しますよね。で、この掌を前面に見せている方向で、内側外側を共通化しましょうというルールになっております。この姿勢を専門的には、解剖学的立位肢位、と呼ばれています。

 なので、この腕の内側の顆粒のようにザラザラした部分を内側上顆、と呼びます。

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 上腕骨内側上顆以外にも、前腕って、この橈骨と尺骨遠いう2つの筋肉ですね、手羽先の様な骨2つで前腕って成り立っているんですけれども、この2つの骨の間のところに浅指屈筋の筋肉は付着しています。これらの部分が浅指屈筋の起始です。

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 で、停止は、最後に2番の指から5番の指の4つに分岐して、さらにその1つ1つが2つに分岐しながら、この指の中節骨ここについています。分岐してついていますよね。

 この浅指屈筋、非常に長い距離がある筋肉ですね。この、肘の関節をまたいで…手首をまたいで…MP関節、PIP関節をまたいで…中節骨についています。筋肉って、関節をまたいでついているのが基本とさっき言いましたが、このまたいでる数が2つ以上あるもの。こう言った長い筋肉にはよくあるんですけども、この多数関節をまたいでいる筋肉を、多関節筋と呼びます。

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 この浅指屈筋、これだけの関節をまたいでいますので、結果的にめちゃくちゃ多くの関節を動かす筋肉です。この「結果的」にというところは少し重要なんですが、ひとまずは起始停止から筋肉の作用についてお話しします。

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 この停止から起始に向かって筋肉が縮もうとすると、こういう方向で筋肉が収縮していきます。肘の屈曲、手首の屈曲、それからMP関節、PIP関節。これらの関節を全て屈曲させる結果となります。

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 しかし、さっき結果的にと言ったところなんですが、直に作用させているのは、このPIP関節なんですね。例えば、浅指屈筋が活躍する例は、鉄棒で掌を話した状態でぶら下がる時と申し上げたら伝わりますでしょうか?この状態です。

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 MP関節伸展、手首伸展で。結構、これ、強い力が出ますよね。

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 基本的に大きい筋肉というのは、粗大な動きをするものが多くて、小さい筋肉というのは弱いけれども、巧緻動作というんですけれども、細かい運動が得意なものが多いんですね。

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 この浅指屈筋は非常に長くておっきい筋肉なので、カバンを持つとか、そういう活躍の仕方をする筋肉なんですね。

 先ほど申し上げたように、ここに糸をつけて引っ張ると、手首もMP関節も曲がりますが、これは関節的に曲がっている、手首やMP関節を固定するとPIP関節を屈曲位で固定して大きな力を出す、ことをしているのが浅指屈筋です。

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 そして、浅いところにある指の筋肉、浅指屈筋があれば、この中に隠れている、深いところにあるのが、深指屈筋という筋肉。

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 これは、停止が、末節骨についています。なので浅指屈筋よりももう少し指先の方まで伸びているということがお分かりになりますでしょうか?で、起始は、前腕の尺骨と橈骨の間についていますので、浅指屈筋よりかは少し距離が短い筋肉になります。末節骨から前腕にかけてこのように収縮しますので、DIP関節を主に屈曲させます。

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 これらが、浅指屈筋、深指屈筋、になります。

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 では、次回第3回は、もっと細かい動作を可能にする筋肉…虫様筋、骨間筋群の話をしていこうと思います。→次回の記事「虫様筋、骨間筋」

郷田明倫(音楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。彰栄リハビリテーション専門学校卒業、作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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