ピアノ学習者のための、指の解剖学〜第1回「筋肉の基本特性」

 こんにちは、かごしま音楽教室Sing!の郷田です。

 ピアノを弾いていらっしゃる方で、ご自身の手や指の解剖や運動について医学的に、または科学的に、理学的に、細かく勉強したいと思っている方…いらっしゃいますか?そして、本当は細かく勉強してみたいけど、例えば医学書、解剖学とかってなんか難しそうで…。知りたいけど難しそうで躊躇してきたという方もいらっしゃいませんか?

 このかごしま音楽教室Sing!のブログでは、医療従事者でもある私が、なるべく分かりやすく人体の仕組みや運動について、解説していきたいと思いますので、是非参考にしていただいて、ご自身の演奏技術の向上に役立てていただければ幸いです。

 今回から4回にわたって、主に指の運動に関係する筋肉を解剖学の視点から解説していきたいと思います。

 ピアノを弾く方は、例えばご自身が実践されている腕や指使いのテクニックが、身体の理学的にはどういう論理で運動しているのかな?というように…ご自身の身体の構造や運動について理解を深めることに役立てていただければと思います。

 ※本当は、肩関節、肘、手首の運動というところもピアノを弾く上では見ていかないといけないと思いますが、かなりボリューミーになりますので、今回から数回は指に限定して記事にしていきたいと思います。

 今回は基礎知識編そもそも筋肉ってこう動く!

 では、今回は、指の話から一旦離れて基礎知識編です。…え?指の筋肉の話の記事じゃないんかぃ!?…裏切られた。笑

 すみません。笑。まずは、そもそもの筋肉というものの運動特性を理解する事なしに、いろんな箇所の筋肉について理解できないんです。ここの理解、めちゃくちゃ重要で、この理解があることが前提で筋肉の話は初めて理解ができるものですので、2回目以降の指の筋肉を深く理解するためにしっかりと理解に努めましょう!

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 人の体はどうやって動いているか、と質問されたら、みなさんならどうやって答えますか?

 筋肉というのは、2つの、正確には2つ以上のなんですけれども、ここではわかりやすく2つのとしておきますが、2つの付着部があって、骨と骨にくっついているんですね。

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 で、その骨と骨の間にあるのが関節です。で、筋肉が収縮、つまり短くなることによって骨と骨を近づける、そしてこの跨いでいる「関節」を円運動させる。そうやって身体というのは日常生活や運動をしています。

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 筋肉は「停止→起始」へ近づく(収縮する)

 上腕2頭筋で例えていきますと、関節上結節という骨の部位、それから前腕の橈骨という部位にくっついています。で、二つの付着部はそれぞれに解剖学的な名称がついているんですね。この関節上結節のほうを起始、橈骨粗面の方を停止、といいます。

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 さて、身体のどこの筋肉も同じですが、筋肉は、停止部分が起始部分に近づいていって収縮する、という特性があるんですね。これは例外なく、必ず、停止から起始にむかって近づくんですね。

 起始から停止の方向で収縮したり、起始停止両方が真ん中に向かって近づいていくわけでは決してないんです!

 そうやって、「停止が起始に近づく」ことによって筋肉が短くなりますよね。短くなった分、関節を支点としてトルクの円運動をしながら2つの骨それぞれの末端がが近づいていく。

 結果として肘関節が屈曲(曲がる)という運動をします。

では、肘が伸びる(伸展する)時は?

 では逆に肘が伸びる時はどういう原理で動くのかというと…

 起始に近づいた停止が基に戻ろうとする、復元する、という特性は実は筋肉になないんですね。どうやって肘が伸びるのかというと、

 上腕二頭筋の裏側に、上腕三頭筋、があります。停止が肘頭、起始が関節下結節という場所です。この上腕三頭筋の停止が起始に近づくことによって、肘が伸ばされる、伸展されるんですね。

 このように、全身のそれぞれの筋肉に、脳から神経を伝って指令が出されることによって筋肉が収縮を起こして、私たちは日常の生活動作や運動、スポーツ、ピアノを弾くこともそうですね、行なっているんですね。

 では、この筋肉の基本特性、これをしっかりと理解していただいたと思います。その上で、次回記事は、いろいろな指の運動に関わる筋肉、見ていきます!

郷田明倫(音楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。彰栄リハビリテーション専門学校卒業、作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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