ピアノを続けるコツ

 これからピアノをはじめる方、すでにピアノを習っている方(の親御さま)。多くの方が不安な点の一つとしてはお子様が「果たして長く続けてくれるかな?」という点なのかな、と思います。

6割以上のお子さまが続かない?

 ピアノを習っているお子様は日本全国にたくさんいますが、6割以上のお母様が「家で練習をしなくて…」とお困りになっているそうです。そしてピアノの習い事はやめてしまった、という人も多くいらっしゃると思います。

 どんな習い事でもそうですが、「途中で諦めてしまった」という経験は、場合によっては失敗体験となり子供の成長に影響を与えるかもしれません(他に熱中できるものが見つかって切り替えられていれば、問題ないかもしれませんが)。

 いずれにしても、お子様には音楽を一生好きでいて欲しいですし、そのためにはピアノのお稽古も成功して欲しいなと私は思っています。

どうしたら続くのか

 そんな、これからピアノ(他の楽器ももちろん)をはじめる方に、この記事では成功するポイントを2つほどお伝えしたいと思います。

大きなポイントは読譜力

 この記事では、ピアノが続かないということ=練習が楽しくならなかった、と定義します(もちろん他にも理由はたくさんあるかもしれませんが)。なぜ楽しくならなかったのか…おそらく最も多いのは「楽譜を読んでその場でピアノ演奏に再現する力」..もっとわかりやすく言えば「読譜力」が育たなかったこと、があげられます。

 (※実はピアノのレッスンよりも、お歌のレッスンの方が譜読みが難しくなく、そういった事情でお歌の方がお子様が「レッスンにいきたくないな..」と思うケースは少ないように感じます。)

 例えば本をスラスラと読めることと同じくらい、楽譜をスラスラとすぐに音に再現できれば、ほとんどの子は、次の曲、次の曲、に進んでいくのが楽しくなります。「次の曲はどんな曲なんだろう?」。「曲をさらう」ことが得意なお子様は練習が好きになります。「YOUTUBEの視聴をまだやめたくない」と親御さんと喧嘩になるのと同じくらい(YOUTUBEを見ないお子様はすみません)「ピアノの練習をまだ続けたい」となります。

お子様がピアノの練習をしたがらない時は、「ちゃんとやりなさい」という対応ではなく「読譜に困っているのか?」それとも「読譜はできるけど曲がつまらないと感じているのか?」など理由を探し特定して、それに対応してあげる必要があります。

 ではここでは「お子様は自分の読譜力に困っていた」と仮定します。読譜力をしっかり育てるためにはどうしたらいいのか。まずは、当教室で気を付ける点をご紹介します。

当教室で気を付ける点

 当教室の小さい子のレッスンでは、ピアノを弾くこと(指の運動)をすぐには開始しないようにします。これには理由がいくつかあります。

ピアノをすぐに弾き始めない理由 その1

 (読譜の話から少し脱線します)幼少の頃は頃は両手の機能が分化していません。(特に3歳児までは)徐々に両手の機能が分化してきて、脱力ができるようになり、いい音を出してピアノを弾く訓練が可能となるからです。(ただし、無理のない指のエクササイズとして、グーで脱力し、3の指、2の指、4の指、5の指、最後に1の指。この順番で鍵盤に乗せて→脱力、を繰り返すようなことはとても良い準備となります。

(※手の構造や人間発達学も学んだ(作業療法士)私がハッキリと言います!)

ピアノをすぐに弾き始めない理由 その2

 ピアノをはじめる前に頭を使う(ソルフェージュをはじめ)エクササイズも実施しておくことが、長い目で見るとても効果的だからです。「拍感(ビート)」「音感」「読譜の基礎(ソルフェージュ)」などをしっかりインプットしておくことを行いながら、ピアノのレッスンの開始時期を待つことです。

 仮に最初にいきなりテキスト(子供用の簡単なものだったとしても)の1番から読譜の工夫をすることなくどんどん進めていってしまうと..「楽譜を読む」ことよりも「指の動き(運動記憶)」に頼る習慣がつく子が多くなります。そうすると、脳は「読解すること」をあまり行わなくなります。

そして加えると「指を見る習慣」をつけず、楽譜を見る事、そのような目線を習慣づけることも大切なことです。

運動記憶力(小脳)に頼りすぎないこと

 少し余談になります。運動記憶とは、脳の小脳を主に使います。小脳は「考えなくても行えるようになった運動」を行う際に機能します。

 多くの方は、子供の頃自転車の練習をして乗れるようになったと思います。子供の頃に一度自転車の運転を覚えると、ほとんどの人はブランクが空いても運転を忘れてしまう事は滅多にありません。例えば…高校卒業くらいから自転車に乗っていなかったけど→10年後に久しぶりに自転車に乗る時。ほとんどの人は「ハンドルを握って..ペダルに足をかけて..片足で蹴り出して..すぐに両足にペダルを..」といちいち考えなくても、感覚的にすぐに運転できると思います(たぶん笑)。10年乗っていなくても難なく運転ができるのは、「小脳」の運動記憶によるものです。(もっといい例えがありますね。。→小さい頃に弾いていたピアノの曲を楽譜なしで弾けるよ、という方。これも小脳の運動記憶によります)

 この「ピアノを弾くこと=指の運動記憶(小脳運動記憶)」のインプットばかりして譜面を読む事をあまりしていないと、毎回毎回、「指の運動記憶(小脳運動記憶)」をしなければピアノを弾けない子となってしまいます。曲がやさしい時はまだいいですが、難しくなればなるほど「譜読み」に時間がかかり、一曲が弾けるようになるまで何日もかかるようになってしまう。そうすると次第に「譜読みがめんどくさく」なってしまいます。そして新しい曲が進まないとついつい「運動記憶によって弾けるようになった曲」に戻って「弾ける快感」でストレスを発散し…次の宿題が進まないままレッスンを迎え先生に「できていない」と言われる..。そのようにして徐々にピアノのレッスンに行きたくないな..と思い始めます。

(※曲の表現、精度、完成度を上げるためには「反復練習による小脳運動記憶」はもちろん大事です。ここでは譜読みに限定した話をしています。)

 なので、まずは実際に「ピアノを弾くレッスン」の導入前に、最低限のソルフェージュによって「指運動記憶に頼らずに、楽譜を頼る習慣づけ、そのためのしっかりとした準備」をすることは、とても大切です。

 そして、良いスタートを切った後も大切なことがあります。それは親御さんにお願いしたいことです。

親御さんが気を付けること

 親御さんが指の運動主体で手っ取り早く弾き方を教えないことです。特にピアノ経験者の親御さんはやってしまうかもしれませんが「見本を見せてあげる」ということは、譜読みの成長を考えると、極力行わない方が良いです。

 実は、結構多くいらっしゃるかもしれませんが..初期の頃にすごくスラスラ弾けるようになって教本もどんどん進んでいく子…でも実は親御さんがつきっきりで指使い、指の運動を教えてくださっていて(頭がさがる思いではありますが..)実際は楽譜がほとんど読めるようにはなっていなかった、というケースがあります。そうすると、必ずどこかで練習の限界が来て、挫折する、という結果が待っていることになります。とても指が動いても「弾けるようになるまでが毎回苦痛」というお子様は、どこかで「読譜力を見直す」ことが必要になります(そうすると、やさしい曲ばかりになって子供のモチベーションキープが難しいという新たな壁も出てきます)

まとめ

 まとめると、ピアノの習い事をお子様が楽しく続けるポイントとしてこの記事で申し上げたいことは2点。

・「ピアノを弾くレッスンを本格的にはじめる前に、ソルフェージュの基礎、指の運動、リズム、音感教育(絶対音感は絶対ではありませんが、あったら便利です)をしっかり行なっておくこと。

・譜読みのトレーニングとしては、親御さんがご自宅で「指運動主体で子供に教えてあげないこと」

です。当教室でもなるべくレッスン中に「初見」を行う工夫を行なっていきます。

GOUDA AKITOMO(声楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

 

 

 

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