ピアノは小さい子のうちから始めるべき?

こんにちは、〈声楽・ピアノ教室〉鹿児島音楽教室Sing!の郷田です。今回は、ピアノは小さい頃から始めるべき?という疑問に対する記事です。

 ・ピアノを小学校1年生から習わせるのはもう遅いのだろうか??

 ・有名なピアニストは「3歳,4歳から始めた」とよく耳にするけど…その頃に始めるべきなのか?

などの疑問を持つ親御さんはとても多く、たくさんの方が気になるところかと思います。

 今回は、これまで小さい子のピアノのレッスンを行ってきた経験則と、人間発達の観点も含めて、幼児のピアノ教育について書きたいと思います。

ピアノは早く始めれば始めるほど良いのか?

 ピアノの習い事は、早ければ早いほど上達するのか?私の見解はこうです。

 まず、「ピアノを習う」ということを、

「モンスター楽器(ピアノのことです笑)を操作できるようになるレッスンをする」

と定義した場合..

 幼児期の子供の身体の大きさ、そして脳の発達を考えたら、明らかに負担が大きなことです。また、「五線譜の大譜表(ト音記号とヘ音記号の二段譜面)を解読する」ということも同様に非常に難しいものです。3,4歳の子に、いきなり教本(子供用だったとしても)の1ページ目から始めていくことは、実はすでにモンスターとの戦いが始まったようなもの..「わからない」という不安から「こわい」とさえ思うようになり、ピアノから逃げる子が多いです。椅子に座らないですぐに席を立ってしまう子、ピアノの下に逃げ隠れる子、などは少なからずこのような心理が働いているのだと思います。

 さらにいうと、3,4歳の子は仮に「(自ら)ピアノをやりたい」と親御さんに言ったとしても「真に自分の意志を持って”やりたい”」と言うケースはほとんどありません。小学生頃とは違い、意志というものがハッキリする年齢でもないため、親御さんがどんなに「本人の希望」と解釈していても、子供からすると「気がついたら通っていた、通わされていた」と思うものです。

 ※ただ、3、4歳頃からピアノに対して特別な興味関心を持ち、理解力がとても優れ、モンスター退治を楽しむかのような、桃太郎のような笑、一部の子(体感的には20人に1人いるかどうかの確率)は、早期のピアノ教育にマッチした場合、非常に優秀な演奏家になる可能性も..実際にはあります。しかしごく稀なケースです。

ピアノを習うとは、学問を追求すること

 ピアノを習う事とは「地道な努力や同じことの繰り返し作業」に加えて「複雑な五線紙大譜表を瞬時に解読するような脳力を身につける」ことです。

 地味な身体鍛錬と、算数に近いような「お勉強」をしっかり行うことと同義なのです。(実際、楽譜のルールは2拍、3拍、3/4、4/4など算数のようなものです)

 国語、算数のような「教科科目」は教育の長い歴史を経て小学生からが適切、と文部省が決めているということは、それらに意味を見出して自発的に続けていくには、未就学である3、4歳ではまだ早すぎるのです。(一部の天才を除いて)

 なので、(ピアノを習うということを冒頭の定義とした場合)ピアノは早くから始めた方がいいのか?という疑問への回答としては、「特別な子を除いて、早く始めすぎることはうまくいかないケースが多い」と言えます。

 では、自分の意思がある程度確立する7、8歳までは何もしない方がいいのか?というとそうではありません。

 上記の時期が早いという意味は..あくまでピアノを習うこと=冒頭の定義(モンスターと向き合うこと)の場合は、という意味です。

3,4歳の子に推奨すること

 大きなモンスターといきなり戦え、と言われたらこわいですが、小さなぬいぐるみと遊んで、と言われたら子供は喜ぶかもしれません。(例えが下手くそですみません。。)

 つまり3、4歳の頃は、遊びの延長で指導者がうまく誘導し(リトミックや簡単なソルフェージュによって)楽しみながら簡易化された記号などを使って、読譜力や音程感、リズム感を自然と体得する事を大いにお勧めします。そうすると、何もしなかった子と比べて、後々本格的にレッスンが始まった時の音楽理解度をものすごく高めておく事ができます。

 つまり、「ピアノというモンスター楽器の操作」を始める前にやっておくべきことが沢山ある。ピアノの操作を始めるための「簡易化された導入、準備」を早くしておくという期間を設ける事を3、4歳から行うこと。この準備については、早く始めておくと後々圧倒的に有利です。

 早くピアノを始めるパターンのうちよくないパターンの一つは、3、4歳から開始したものの、運指の能力に対して「読譜力」がついていないまま弾ける曲が増えている状態です。幼少の時に、楽譜という…なんとも抽象的で複雑な形の記号や線上の微妙な位置の違いによる音の高低などを表しているもの、という概念がちゃんと理解できる子は、まずいません。音程とリズムを分けてそれぞれが理解できたとしても、その2つを統合して、さらに自分の指で再現するには、6歳ごろまで待たなくてはいけません。

 逆にいうと、複雑な概念をわかりやすいものに置き換えてトレーニングを積んでおくこと、先生の真似をしておくこと、を3,4歳から開始しておくことで、後々複雑な概念をしっかりと理解できるための準備となります。

身体面について

 幼児期の子供はもちろん、身体的にもまだ未熟です。しかし、工夫をしながらそれぞれの指を鍵盤を押して脱力をする、ようなエクササイズを、工夫をして行なっておくと、指を独立して扱う準備となります。

 小学生になった後も低年齢のうちは、指や体が大きい子の方が有利になるものです。なので、あまり他の子との深度を比較せず、長い目で見て、個人の成長に合わせて段階を踏んでいく方が上達すると考えられます。

最後に

 表面的にピアノが弾けている姿を、なるべく早く見たいと..親御さんは焦るかもしれません。しかし、適切な時期を判断していくことが大切で、発達時期に対して無理な要求を子供にしてしまうと、子供は非常に敏感で繊細なので簡単に「ピアノを教えられる」ことに抵抗を示します。

 3,4歳から教室に通わせることを決めた親御さんは、この点を理解していただけると良いと思います。早くから預けてよかった、と後々思うには「成長段階に合わせた環境設定」がとても大切です。

GOUDA AKITOMO(音楽家、作業療法士)

武蔵野音楽大学卒業、同大学院修了。イタリア国立ボローニャ音楽院留学。2004年「第35回イタリア声楽コンコルソ」ミラノ大賞、松下電器賞。2007年「第12回世界オペラコンクール新しい声」アジア予選ファイナリスト。発声法の研究のために解剖書を読み漁ったことからリハビリに興味を持ち、身体や脳の機能など専門教育を経て作業療法士の国家資格を取得。かごしま音楽教室Sing代表。

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